熊野古道英語ガイドって?②(2018年12月改訂)

2.高野熊野特区通訳案内士の現状と課題

2018年12月現在、180名が登録されていますが、実際に案内に出て報酬をいただいているガイドの割合は決して高くはありません。

昨年度は21名が合格しましたが、うち、Mi-Kumanoで活躍しているガイドはたった一人。

私が受験した年度でも、やはり合格はしたけれども業務に携わっていないという方が多いです。

これは通訳案内士においても状況は同じです。

理由は様々なことが考えられますが、以下のような理由が考えられます。

① 収入が安定していない

当然、仕事がなければ収入は発生しませんので、月によってばらつきがあり安定していない仕事です。

特に熊野においてはピークシーズンがはっきりとしているため、残りのシーズンをどうするかが最大の課題です。

私は専業ガイドですが、熊野でこれを生業にしている人は私の知る限りでは他にいません。

熊野を訪れる外国人旅行者は年々増えてはいますが、いまだ梅雨や冬はまさに閑古鳥が鳴く状態で、現実問題として生活面ではかなり苦しいのが現状です。

また、依頼件数は着実に伸びてはいますが、依頼がピークシーズンに集中するため、一日で4件、5件と入る日も珍しくありません。

ただ、そうなっても団体としてはうれしいですが、個人的には何の恩恵もありません。私の体はひとつしかありませんので、たとえピークシーズンとはいえ、1ヵ月で得られる収入には限界があるということです。

② とりあえず受けてみた

まえがきにも書きましたが、「ガイドをすることによって自分は何をしたいのか」という明確な目標を持たずに「とりあえず受けてから考えよう」と考えている方が多いように思います。私の場合は、ガイドになることは手段であり目的ではありませんでしたので、合格した際には「さあ、これからや」という気持ちがありました。

みなさんはどうですか?

あと、「研修や受験が無料だからとりあえず来た」と自己紹介でおっしゃっている方がいましたが、こういった物見遊山的な方がいるのも事実です。

しかし、受験料を徴収する通訳案内士の試験に合格したにも関わらず、業務についていない方がいるのも事実で、一概に「無料だから」というのは理由にはならないと思います。

ちなみに、データが古いですが、観光庁の2014年の調査では、通訳案内士を専業として活躍されている方は、全体の約6%にとどまっています。

熊野においてはさらに低いはずです・・・

③ どうやって仕事をもらえるのかわからずそのままになっている

いざ合格はしたものの、どこに登録しようか、どうやって仕事をもらおうかと迷っているうちに日々の忙しさに流されてそのままになっている方がいるのかも知れません。

一番の方法はガイド団体に所属することですが、私どものPR不足が原因なのか、入会する方が毎年非常に少ないです。

研修の場でも、ガイド団体に所属する方法をお伝えしているはずですが、もう少し私たちが踏ん張らないといけないところなのかもしれません。

あるいは、私のことが嫌いとか・・・

④現在の仕事との兼ね合いが難しい

兼業を目的とされている方については、本業の休日に合わせる必要があるため、なかなか予定が組みにくいということが考えられます。

私も本業を持っていた時は、せっかく仕事のオファーが来ても受けられなかったり、逆に、せっかく職場に無理を言って休日を取ったにも関わらずキャンセルになってしまったりと、本業との兼ね合いが難しい部分があります。

⑤ 地理的に遠い

高野・熊野地域通訳案内士の受験者のうち、紀北方面の方が大半を占めています。

これでは、何日もかけてお客様とご一緒するスルーガイドならともかく、1日のみのガイドであれば、はるばる紀北から交通費と時間をかけてやってきて、長距離を歩いて案内することは現実的ではありません。

逆に、私どもはもちろん高野山を案内することも可能ですが、交通の便の悪さも手伝って現実的には不可能に近いのと同じです。

また、スルーガイドは初心者にとってはハードルが高すぎます。

3.誰でもガイドができるようになった

昨年(2016年6月2日)、「通訳案内士の業務独占規制を廃止し、名称独占のみ存続する」ことが閣議決定されました。

・・・なんのこっちゃ。

要は、「通訳案内士の資格がなくても有償で案内できますが、資格を持っていない人は『通訳案内士』と名乗ることはできません」ということです。

爆発的に増加する外国人旅行者に対応する苦肉の策ですが、心配されるのが「ガイドの質の低下」です。

ガイドは言語のスキルだけあればなれるものでもなく、知識があるだけでもなれるものではありません。

たとえ英語を流暢に話せても、知識がないガイドはやはりクレームの対象となります。

熊野のガイドではないですが、お客様から「前のガイドは何も知らなかったからこちらにお願いに来た」と聞いたことがありますし、また、「○○のガイドはジャパニーズアクセントが強すぎて何を言っているのか分からない時があった」と聞いたこともありました。

ですので、有資格者全員が素晴らしいスキルを持っているのかといえば疑問です。

ある旅行会社からは「通訳案内士でさえ、お客様を満足させるどころか、がっかりさせてしまった人がいるので、お宅は大丈夫か?」と聞かれたことがあります。

ある一定の基準で合格したガイドでさえ、このようなクレームが出るということは、無資格者が案内すればどうなるのか・・・想像に難くありません。

ましてや、経験がものをいうこの世界で、一体誰からノウハウを学ぶのでしょうか?

おそらくガイド団体がその受け皿になるのでしょうが、そうなるとさすがに「誰でもOK」というわけにはいきません。ましてや興味本位で来た人にそれを教える暇なんてありません。

現在は資格がその基準となり、個人差はあれ一定のスキルを知ることができましたが、業務独占廃止後は、各団体でその基準を設けることになるでしょう。

そうなると、逆に有資格者が入会や仕事を受ける際に優遇されることになるでしょうし、それが強みになると思います。

現在Mi-Kumano でもその基準を作成し、試験的に実行しています。

1回の面接だけで絶対分かるわけがないですから。

ガイドの質は団体の評判に関わることですので、ここは慎重にならざるを得ません。

ただ、言語のスキルがあり、着付けや武道、茶道など、自分の得意分野を持っている方なら、無資格者でもその特定の分野限定で即威力を発揮できるかと思います。

また、言語スキルのある方は、1年に一度しかない受験を待たずして数カ月でガイドデビューできる可能性もあります。

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