熊野古道の神社③

高原熊野神社

創建は1403年、本宮から勧請されたと伝わり、熊野古道中辺路では最も古い神社とされています。

このお社は王子には含まれておらず、地元の氏神さんとして存在してます。

祭神はスサノオノミコト、速玉さん、アマテラス様。

・・・本宮から勧請されて来たのに、イザナミさんがいません。

これは憶測ですが、本宮の主祭神がイザナミさんからスサノオさんに変わってから勧請されたのかもしれません。

ここにも、神仏習合が現れています。

ご神体は、熊野ならでは?の懸け仏(十一面観音)です。

十一面観音であれば、本宮ではアマテラスさんと同一とされています。
ということは、こちらの主祭神はアマテラスさんなのかどうか?私には分かりません。

社殿は春日造りの桧皮葺で、桧皮は約30年に1回葺き替えられています。

この葺き替えには相当な金額がかかります。
桧皮葺に最適な樹齢100年以上のヒノキが入手困難であることと、桧皮葺職人の技術的な面からなのだそうです。

1938年 30万円
1968年 200万円
1998年 2000万円
2016年 1400万円

クスノキ

樹齢の話

境内には、樹齢800年~1000年と言われるクスノキが3本あります。

なぜ、切ってもいない木の樹齢が分かるのか?
不思議ではありませんか?

1950年のジェーン台風がこの地方を襲った際に、このクスノキの近くにあった杉の巨木が倒れたそうです。
その倒れた杉の年輪を数えたところ、800年を超えているということが分かったそうです。
そこから、このクスノキの樹齢を推定したとのことです。

境内社務所の裏手にあるクスノキが一番大きいです。

このうちのどのクスノキのものかは分かりませんが、ここよりずっと下にある石船川の護岸工事をしている際に、クスノキの根っこが出てきたという話があります。

神社から川まではクスノキがありませんので、このクスノキの根っこだということになったようです。

信じるか信じないかは、お任せします。

クスノキの用途と意味

クスノキと言えば樟脳で有名ですね。
あと、海外の方ならタイガーバームの原料と言えば分かってくれます。

クスノキは、よく神社に植えられています。
お寺にはイチョウ。
聞いた話では、海南の藤白神社や田辺市の蟻通神社のクスノキは、神社が火事に見舞われた時に白い水?を出して延焼を防いだという話が残っているそうです。
イチョウにも似たような話があります。
昔は防火の意味で植えられたのかもしれません。

あとは、神聖な木、または縁起のいい木という意味合いもあるようです。
現在では「サカキ」といえば、あのサカキですが、昔は杉、松、クスノキ、ツバキなどもそういわれていたようです。

これらはすべて常緑樹です。
常緑樹は葉が全部落ちることはありませんので「永遠」を意味するというところから植えられたという話もあるようです。

サカキの語源は「栄木」「境木」のようです。
俗世間と神域を分ける境目の木、その神社が栄えるという意味合いもあったようです。

熊野古道のクスノキ

中辺路沿いには、クスノキが自然に生えているのが珍しいです。
神社の境内でも珍しいです。
そういう理由からかは分かりませんが、「熊野古道にはクスノキがない」と言っている人があいます。
しかし、それは中辺路の話であって、これが大辺路では様相は一変します。
いたるところにクスノキが自然に生えています。

私はよく「熊野古道は中辺路だけではない。熊野古道の他のルートのことも知って初めて『熊野古道のガイド』と言える」と会員には言っています。

井の中の蛙にならないように、物事を俯瞰する習慣をつけていただきたいものです。

南方熊楠とクスノキ

よく「南方熊楠が神社合祀反対運動でこのクスノキを守った」という解釈をする人がいますが、ちょっと違います。

この鎮守の森を守ったのは、当時の高原村の村長・宮本わぞう(漢字が分かりません)さんです。

当時の高原村の集落は95軒(現在は42軒)
その村人たちは、村民の憩いの場がなくなる、鎮守の森がなくなるということを懸念し、行政に陳情した結果、ある条件を元に許可を得ます。

その条件とは、基本金5000円を拠出することと、神社に宮司を置くこと。

この5000円、今の金額に換算すると約1億にもなるそうです。

宮本氏は、県の官吏が来た際には、栗栖川や田辺の新地の料理屋に連れて行き、「待ってくれ」と言って何度も先延ばしにしていました。

そこへ、南方熊楠の神社合祀反対運動の波が押し寄せ、この件はうやむやになったというのがこの話の真相のようです。

なので、熊楠は間接的にこの森を救ったと言えることができると思います。


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