ガイド体験談(救急隊編)

シンガポールからお越しのお客様で、滝尻~高原をご案内していた時のこと。

田辺駅でミートをし、車中は楽しくお話をしながら滝尻に到着。古道館で熊野古道について説明をしたあと、いざ出発。

いつものように最初の急坂を説明がてら休憩を入れながらご案内していました。

不寝王子(ねずおうじ)を過ぎ、道標1番を過ぎたあたりから、ご主人のペースが急に落ち始めました。

本人は「大丈夫」とおっしゃっていましたが、さらに歩くペースは落ち、しまいには木につかまりながらよちよち歩くようになったので、歩くのを止めさせました。

冷や汗とともに、胸が締め付けられるような感じがするとおっしゃってました。さらにはご主人が喘息持ちだと分かり、症状から心筋梗塞の疑いもあるのでこれ以上歩かせるのは不可能と判断。

救急隊を呼ぶことにしました。

以前の研修で、田辺市消防本部でどのような対応をしているのかを見ることができていたので、慌てずに落ち着いて呼ぶことができました。

電話では、どのあたりにいるのか、古道から外れたところにいないか、傷病者の症状、何か薬は処方したか、通報者(わたし)の名前と携帯の充電はまだ十分にあるかなどを聞かれました。

電話で話をしている間に、すでに近くの消防から出動したらしく、サイレンの音が聞こえてきました。

消防との通話が終わってから間もなく、救急隊の方から電話が入り、さらに傷病者の状態(意識に有無など)を聞かれました。

それから待つこと30分。ついに救急隊の方々が到着。6人~7人はいたでしょうか。それからいよいよ下山開始。

しかし、ここは急坂の続く古道上でも1、2を争う難所。ボートのような形をした特殊な担架にお客様を乗せ、担架の上部と木をロープでつなぎ、地面を滑らせながら下りて行きます。慎重を要する救出のため、かなりの時間を要しました。

今度は奥様の方が、このままでは古道で日暮れを迎えてしまうかもしれないと心配されていたので、そのことを救急隊の方に告げ、わたしたちだけ先に下山させていただくことにしました。

ふもとのあんちゃんの店で待っていると間もなく、ご主人が無事に下山。

症状はすでに落ち着いていましたが、念のため病院に搬送してもらうことに。

病院での通訳をお願いされましたが、あいにくわたしの車は高原に置いています。そこで、消防の車に乗せてもらって車を高原まで取りにいき、そのまま病院に直行しました。

幸い、深刻な症状もなく、ゆっくり休んでもらえば翌日からは大丈夫という診察結果だったので安心しました。

そのあとはタクシーを呼んで当日宿泊予定の宿まで送ってもらうようにお願いしました。

宿に着いた頃を見計らってもう一度大丈夫か電話をし、少し本人さんとお話をして、長い一日が終わりました。

お客様には大変な一日で気の毒でしたが、わたし自身も大変貴重な体験をさせていただきました。

お世話になった救急隊の方々、この場を借りてお礼申し上げます。

本当に助かりました。

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