熊野の危険な生き物たち(ヘビ編)

「ヘビは大の苦手」という方も多いと思いますが、熊野古道を歩いていると必ず奴らと遭遇する時が来ます。
生理的に嫌いであれば仕方ないところもありますが、ガイドとして最低限のところは覚えておいて頂きたいところです。

早速いってみましょう。
※姿が苦手な方は、要注意です。

マムシ Pit Viper

最も気を付けなければいけないヘビがマムシです。
マムシは比較的おとなしいとされていますが、時にとぐろを巻いて飛びかかってきます(あくまでも刺激をした場合ですよ。知らずに通りかかった結果、「刺激を与えた」ということもありえますが)

私は小学生の時にマムシに咬まれ、一命を取り留めた経験があります。
・・・この場合は私が悪いのですが。

学校の帰り道、以前からヘビを見るたびに捕まえて遊んでいた「少年和田」は、ある日ヘビが草むらに入って行く姿を見つけました。
「これはチャンス」とばかりに早速そのヘビを捕まえ、しっぽを掴んでどんなヘビか確認にようと持ち上げた時に手を咬まれました。

始めは「日本に毒ヘビがいる」ということを知らなかった少年和田。
しかし咬まれた後、ちょっと違う感覚があり、直感で「ヤバいヘビに咬まれた」と悟りました。

帰宅した時、ちょうど父が仕事の休憩で帰ってきていたので、「ヘビに咬まれた」と言って手を見せると「お前、ハビ(マムシ)に咬まれたな。すぐ病院に行こう」と言って、白浜町内の病院に行くことになりました。

ちなみに、紀南地方ではマムシのことを「ハビ」と言います。

沖縄のハブとはまったく違います。

この時すでに咬まれた右手の中指は薄紫色に変色し、腫れ始めていました。
病院に到着するも、その病院には残念ながら血清がなく、隣の田辺市まで行くことに。

救急車を呼んでくれればよかったのですが、なぜかそうはせず、父の安全運転で次の病院に行くことになりました。
車中で少年和田は呼吸がしにくくなり「もう死ぬかも」と子供心に思いました。

病院に到着し、ベッドで病室まで運ばれている間に気を失いました。

気がつくと、自分は生きているのか、すでに死んで死後の世界を見ているのか、分かりませんでした。

咬まれた右手は、肩までパンパンに腫れ、半袖の制服のシャツもお医者さんに破られていました。

・・・こんな体験はなかなか出来ないでしょうし、もう二度としたくありません。

それから少年和田はヘビがトラウマになったかと思えば・・・

まったくありませんでした(笑)

今でも平気でマムシ以外のヘビは掴めますし、何なら熊野古道を歩いている時にマムシがとぐろを巻いて襲いかかって来ようとしていたので、石で殺した経験もあります。

しかし、さすがにもう素手では掴む気はありませんが(笑)

ヤマカガシ  Tiger Keelback

近年まで「無毒」と考えられていましたが、毒牙が口の奥にあることが判明し、晴れて「毒蛇」と認定されました。
特徴としては、首まわりが黄色く、赤と黒のブロック状の紋様があることですが、このヤマカガシは個体差が大きいので、中には黒い個体もいて、見分けることが難しい時もあります。

性格はおとなしく、あまり咬まれたという事象もありませんが(2017年、兵庫の男の子がヤマカガシに咬まれた事件がありましたが)、注意すべきヘビであることに変わりはありません。

参考:男児かんだヤマカガシ?強い毒性 死に至る恐れも

また、ヤマカガシは首の後ろの「頸腺」というところにも毒を持っています。
これは防御用の毒で、ここを掴むと毒が飛び散るようになっています。
目に入ると激しい痛みに襲われ、最悪失明します。
この毒はヒキガエルを食べて蓄積されているらしく、ヒキガエルを食べていない個体にはないそうです。

ヘビに咬まれたら?

さて、万一ヘビに咬まれたらどうすればいいでしょうか?
昔は「傷口をナイフで切って、近くに川があれば毒を流して・・・」と本で読んだことがありますが、今では「咬まれた箇所を切る」とか、「縛る」「毒を吸い出す」などの行為はかえって逆効果と言われています。
しかし中には病院でも「切開、吸引、縛り」を推奨しているところもあり、判断が難しいです。

毒蛇に咬まれた直後、その毒はすでに細胞の組織に散ってしまっているので、血を出して毒を吸い出してもさほどの効果は期待できないらしいのです。

・・・そういえば、少年和田もそのような処置をせずに助かっています。

では、どうすればいいかというと、「安静を保ち、すぐに救急隊を呼ぶ」が一番の方法のようです。
下手に歩いて心拍数を上げてしまうと、それで毒の回りが早くなります。
また、傷病者を落ち着かせることも必要です。
心理的な不安から心拍数を上げてしまわないように、「大丈夫」と落ち着かせることが大切です。

2024年追記
近年では「走ってでもいいから早く受診を」と主張しているところもあり、賛否が分かれるところです。
マムシに咬まれたら、走ってでも受診を

しかし、そうは言っても、ガイドとしてはそれでは「初期対応が不十分だ」と、責められる可能性もありますので、お客様を安心させる意味合いも兼ねてポイズンリムーバーなどで吸引するなどの処置をすることも必要かもしれませんね。

また、どんなヘビに咬まれたか、その特徴を覚えておくことも重要です。
咬まれたヘビによってその対処法が変わってくるからです。
万一姿が確認できなかった場合は、どのような症状が出るかを確認する方法もあります。
マムシやヤマカガシにかまれたときの対処法

マムシに咬まれた場合は、少年和田のようにすぐに腫れの症状が見られます。
ヤマカガシの場合は、兵庫の男の子の事例でもあるように、出血が止まらなくなり、頭痛がするなどの特徴があるようです。腫れもあまりないようです。

こちらの登山者の体験談は大いに参考になると思いますので、ぜひご一読を。
マムシに噛まれると

ちなみに少年和田は、咬まれて入院してから約2週間で退院しました。
その間の治療(毎日点滴+毎朝のでっかい注射)や壊死した部分の縫合手術は苦痛でした。
手術の時は、麻酔が効くまで泣き叫んで暴れたことを今でも覚えています。

この「空白の2週間」のおかげで、算数の授業がついていけなくなり、算数が大嫌いになりました。

・・・いや、元々嫌いだったかも(笑)

危険ではないヘビ

本州には、上記2種類しか毒蛇はいません。
しかし、他にもヘビはいるわけで、それが毒蛇かそうでないかを確認できる術を持っていれば、不必要に怯えることもないかと思いますので、ご紹介します。

シマヘビ  Four-lined Ratsnake

恐らく熊野古道で一番多く見られるヘビではないでしょうか?
気性は荒いです。
お客様と歩いている時に、お客様がトレッキングポールで突っつくと飛び掛かってきたことがあります。
シマヘビには、その名の通り体には縞模様があります。
しかし、このヘビも個体差が多く、見分けることが困難な場合があります。

私はこいつにも咬まれたことがありますが、牙がノコギリ状になっているようで、指の深いところまで結構「サクッ」と入ってきました。
結構血が出ましたね。
毒がないとはいえ、牙をそのような形にすることで効果的に獲物を捕まえているようですね。

先日、梅畑に行く途中で黒化型を見つけて写真を撮りましたので掲載しておきます。

アオダイショウ Ratsnake

シマヘビとよく似ていますが、シマヘビよりも大型で2 mに達するものもあります。
渓流釣りで山奥に行った時に、胴体の直径が5センチ以上ある巨大なヤツと遭遇したことがあります。デカすぎて全容を見ることはできませんでしたが、日本には大蛇が存在しないことから、あれは恐らくアオダイショウの巨大版だったのだと思います。

アオダイショウも縞模様もありますが、シマヘビのものより不明瞭で、体の色は青(緑)っぽいです。

決定的な違いは、目の色です。
シマヘビは赤っぽく、アオダイショウはオリーブ色(茶色)です。
しかし、この特徴は近くでないと確認できませんので、あまりいい見分け方ではないと思いますが。

アオダイショウの幼蛇はマムシにそっくりなので見分けが難しいです。

模様が非常に似てはいますが、

マムシのそれは模様の真ん中に黒い点があること。
マムシの瞳は縦長、アオダイショウは丸。
マムシの体は「艶消しで太くて短い」、アオダイショウは「艶ありで細長い」

マムシの頭は三角、アオダイショウは楕円

くらいが挙げられるでしょうか。

マムシの瞳
マムシの頭の形と模様(模様の真ん中に点があります)

とにかく、「疑わしきは近寄らず」です。

ジムグリ Burrowing Ratsnake

見た目が派手で毒蛇のように見えますが、ジムグリは無毒です。
幼蛇時代は赤みが強く鮮やかな色をしていますが、成長とともに赤味が薄れ茶色っぽくなります。
ただ、このヘビも個体差があり、一概に判断しにくいものもあるようです。

「burrowing ratsnake」と言われるように、穴が好きで穴掘りも得意のようです。

ジムグリは小雲取越で何度か見たことがあります。
ある時、岩と岩のすき間に頭だけ突っ込んで入っていたのをお客様が見つけて小さな騒ぎとなりました。

「あれは絶対に毒ヘビだろう?」と自信満々に言っているお客様に「いや、違いますよ」と答えて怪訝な顔をされたことがあります(笑)

初めての「出会い」は果無山脈を歩いている時で、あやうくこいつを踏みそうになりました。
この時、尻尾を振って音を立て、ガラガラヘビさながらの威嚇方法を取っていましたので、「うわっ!こいつ毒持ってんちゃうか?」と思ってとにかく落ち着かせて去ってもらいました。
帰宅後に調べたら無毒と判明した・・・という経験があります。

2022年 追記

ヒバカリ Japanese Keelback

ヒバカリ

8月に熊野古道小辺路を歩いている時にヒバカリを見ましたのでリストに追加です。
写真の個体はかなり小さいですが、成長してもせいぜい60cm程度なので小さい部類のヘビに入ると思います。

私たちが見た個体は40cm程度でした。

逃げ足が早くてじっくりと姿を確認することはできませんでしたが、登山ガイドの方が言っていたので間違いないと思います。

歩いている最中に2匹見ました。

「ヒバカリ」とは「噛まれればその日ばかりの命」から来ているらしく、以前は毒蛇だと考えられていました。

ヘビを見たら

ヘビを見たら、「とにかく近づかない、刺激しない」に限ります。
ヘビも防御の最終手段として咬んでくるわけで、どこかの人間のように難癖をつけてきて争いを好むような生き物ではありません。

少しおとなしくしていれば、ヘビの方から去ってくれます。

また、不用意に藪に入っていかない、誤って踏んでしまわないように足元に注意をするなどの普段の心がけが必要です。

以上、今回はヘビについてお話しました。
ご参考になれば幸いです。

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