多様な文化的背景の違いを理解する28

お役立ちフレーズ①

決まりきった予定は現在進行型で

「~する予定です」の場合、「be going to」や「will」などを使いがちです。
もちろん、行程に変更が生じる場合などは問題ない表現ですが、決まりきった行程の場合は現在進行形を使います。

以前、小雲取越を歩いている時、長い上り坂を歩き終えたあと、お客様から「Are we walking the uphills like this later on?」のように聞かれ、その質問の意味を理解できなかったことがありました。

坂道は状況によってなくなったりするものではなく、順当に歩いていれば必ず訪れます。
なのでここは「We are walking 3 more.」のような返答になります。

コース説明をする場合などは、現在進行形を使うようにしましょう。

「maybe」「some more」の多様は禁物

もうご存知だと思いますが、「maybe」は日本語で「多分」です。
日本語での「多分」は、その確率が30%でも80%でも「多分」ですが、英語の場合の「maybe」は確率が低い時に使うため、あまり使用すると「この人は頼りない」と思われてしまいます。
普段の付き合いでもそうですが、特にこれが「お客様とガイド」の関係となると問題です。
日本語の感覚で「maybe」を多用しないようにしましょう。

あと、「some more」ですが、これはお客様から「あとどのくらい歩くの?」という質問が出た時に「some more」を多用して「君は『some more』ばかり使うが、全然終わりが見えないじゃないか」と言われたガイドがいます。

このような質問があった場合は、「あと10分です」など、具体的に数字で示してあげることが重要です。
お客様は歩いたことがないコースを歩いているわけですので、当然距離感が分かりません。
それが精神的な不安に繋がりますので、具体的な数字で示してあげるという配慮が必要です。
それには、やはり現場のことを熟知しておく必要があることは言うまでもありません。
距離が分かれば、同時に距離を示してあげるとなおいいです。

私は先輩の語り部さんからの「現場100回」という言葉が、深く胸に刺さっています。
それくらい、現場の知識(この場合、距離や所要時間、どこに何があるを知っておくことなど)は非常に重要です。

「15」か「50」か

「finteen」と「fifty」の発音が非常に似ているため、ネイティブ同士でも確認することがあるそうです。
私もよく「15」か「50」かを聞かれました。
15分と50分では随分違いますので、この確認は重要ですよね。

あまりにもこの手の質問を受けるので、私は「fifteen」と言ったあとに「one five」、「fifty」の後に「five zero」を付け足して説明するようにしています。

和製英語はもちろん通じない

日本語でよく使う「アバウトな」はもちろん通じません。
人について、その人がアバウトな人であると言いたい場合は「He is not fuzzy about anything.」、事・物については「ambiguous」などを使います。

また、意味が同じでも発音がまったく違う語もあります。
「アレルギー」や「ココア」などです。
あえてカタカナに直せば「アレジー」「コゥコゥ」のような発音になります。

あとは地名や固有名詞なども、日本での発音と大きな違いがある語があり、初めて耳にした場合理解出来ない場合があります。

「北京」「ウィーン」「習近平」など。
あと、最近では「武漢」も聞き取ることができず、聞き直してしまいました。

実際には、お客様が自分のレベルに合わせてくれることがほとんど

我々日本人が外国人と日本語で話をする場合、相手の日本語運用能力が低いと感じれば、こちらの日本語のレベルを落として話すように、お客様もこちらの英語の能力を見て下げてくれることがほとんどです。
特に、外国語を学んだことのある方であれば、そのあたりの配慮はしてくれます。

外国語習得がいかに難しいか、身にしみてわかっているからです。

反対に、若い人はそういった感覚があまりないようで、逆に「何で私の言っているこれくらいのことが理解できないのだ」とか、それ以前に「私の言っていることはすべてわかってくれている」という前提で容赦なく話してくる傾向があります。

もし、これを読んでくださっている方の中で、外国語に対する自身がない方がいらっしゃたら、臆せずコミュニケーションを取るように心がけてもらえればいいと思います。
中にはうまくできずに困ってしまうことがあるかもしれませんが、そういった経験がまた、あなたの外国語運用能力を高めるきっかけにもなります。

私は海外経験がまったくありません。
しかし、この仕事を6年しているおかげて、かなり英語力が鍛えられました。
ガイドとなると、1日3時間から多い時で10時間、あるいはそれ以上、日本語が許されない状態が続くわけです。
家で机に向かって1時間勉強するよりもずっと効率的で早く身につきます(もちろん、家で勉強する時間は必要ですが)

私はこれを「駅前留学」ならぬ「熊野古道留学」と言っていました。


多様な文化的背景の違いを理解する27

トラブル発生時の心構え

次に、トラブルが発生した時の心構えについてです。
いくら気をつけていてもトラブルは起こります。
その時にどうすれば適切に対処ができるのかをお話します。

慌てない・冷静さを保つ

当たり前ですが、一番大切なのは慌てないことです。
トラブルが起こった時というのはどうしても気持ちが動転し、慌てがちになり適切な判断が難しくなります。
特にお客様が怪我や転落といった事象が起こると冷静さを保つ事が難しくなります。

もちろん、普通ではないことが起こるわけですから、お客様もガイドも冷静でいられるわけがありません。
しかし、グループのリーダーであるガイドが正気を失ってしまえば、お客様に(同行者がいれば同行者にも)その気持が伝染してしまうとお客様までパニックになります。
内心は落ち着いていなくても、外見だけは「落ち着いている」という表情を見せることが重要です。
また、お客様に「大丈夫ですよ」と言うことによって自分にも「大丈夫」と言い聞かせることになりますので、双方の気持ち落ち着ける効果があります。

また、運悪くトラブルに遭ったお客様が離脱しなければならなくなった時は、そのお客様への配慮はもちろん、残ったお客様も少なからず精神的にダメージを負っています。
そのお客様たちを落ち込ませないためにも、ガイドは気持ちを上げていかなくてはなりません。

・・・実際にはなかなか難しいですがね(笑)

想定されるトラブルを予想しておく

あまり考えたくはないのですが、「ここでこういったことが起こればどう対処しようか」と考えておくことも有効です。
特に危険が予測されるところでは効果があります。

トラブルというのはどこで起こるか分かりませんので、これには限界がありますが、しないよりはマシです。

経験によるデータベース化と共有

そうは言っても、一番効果的なのはやはり経験です。

ガイドは車の運転と似たところがあります。

例えば、「今から行くあの交差点ではこういう事故が想定されるから、対処法としてこうして」などと運転前にいちいち予想する人はいませんよね。
ある意味「出たとこ勝負」で、実際に運転していてヒヤッとした事や、起こってしまったことを経験値としてデータベース化してしまう方が効率がずっと良いです。

そうすることにより、「あ、ここは見通しが悪いからスピードを落とさないと」という心理が反射的に働くようになります。

実際に起こるかどうか分からないことで頭を悩ませる時間を過ごすより、ガイドに出てしまった方がずっと効率的です。

時には「あの時こうすればよかった」という反省をする時もありますが、その経験は必ず次のガイドから活かされます。

その経験を積み紙を重ねるように一枚ずつ重ねることにより、ガイドとしての「厚み」が増していき、経験したトラブルについては落ち着いて対処できるようになっています。

また、起こったことやヒヤッとした事などは、仲間のガイドと共有することにより、その仲間のガイドもデータベース化ができ、いざトラブルが起こっても対処できるようになります。
対処法を知っているのとそうでないのとでは、雲泥の差があることは想像に難くありませんよね。

こうして個人だけではなく、仲間と一緒に全体でレベルを上げていくようにすればお客様からの信頼も得られ、「あのガイド団体は素晴らしい」という噂が広がり、結果的にあなたに仕事がたくさん入って来るようになるのだと思います。

仲間との連携は大切です。

多様な文化的背景の違いを理解する26

携帯水没

事件は小雲取越が終わった後に起こりました。
小口は自然豊かで美しい川があり、夏場などはよくお客様を川にお連れして一緒に泳いだりしていました。

・・・もう想像できますよね?(笑)

嬉しさのあまり?携帯をポケットに入れたままダイブ。
携帯がご臨終になりました。

宿に戻ると、生米の中に携帯をいれていました。
「復活することがある」のだそう。
しかし、残念ながら今回に限っては?復活することはありませんでした。

忘れ物

人間は忘れる動物です。
人種、民族は関係なく忘れ物は必ずします。

こんなケースがありました。

近露王子で説明がてら、お客様はベンチに座って携帯で写真を撮っていました。
休憩も終わり近露王子を出発、楠山坂を上りきったところで、お客様の携帯がないことに気づきました。

「多分、近露王子だ。あそこならだれかいるかも知れない」ということで、仲間のお客様がその携帯に電話をしました。

すると、その携帯に応答が!

しかも電話口に出たのは外国人で、泊まる宿も同じだということがわかりました。

やはり、写真を撮ったあと、携帯をベンチに置いてきてしまっていたようです。

日本では最近、都市部でも水道水はきれいというイメージが定着しつつありますが、外国ではまだまだ水事情はよろしくないところが多いようです。

これは、私ではなく、仲間のガイドのお話です。

香港からのお客様で、小雲取越を歩いている時に転倒してしまい、頭を怪我してしまいました。
そこで、ガイドが消毒のためにペットボトルの水を出して来た時、お客様から「それは何の水なの?」と質問されたそうです。

「水道水」ですよ。というと、お客様が「水道水を消毒に使うの?」とおっしゃったそうです。
「日本では水道水はきれいなんですよ」ということで納得してくれたようですが、日本人の水道水の感覚と、外国人のその感覚が違うということを頭の片隅に入れておく必要があります。

ちなみに、頭を怪我すると結構血が出ます。
消毒液では追いつかないので、水で洗い流すというこのガイドの判断は正しかったと思います。
ただ、ペットボトルの水は新品で、お客様の目の前で封を切って「新品ですよ」とアピールすると良いと思います。

私も、お客様が転倒して口を切った時にはそのようにして水を出しました。

アウトプットの重要性

高野・熊野地域通訳案内士の現場研修が終わりましたが、その中で質問された「知識を得る方法」の答えの一つとして、今回はアウトプットの重要性についてお話をします。

ガイドはアウトプットできてなんぼ

当たり前ですが、ガイドはアウトプットができて初めて仕事ができるようになります。
研修などで得た知識を整理し、自分なりに口に出して言えるようにしておかなければなりません。
以前の法人内の研修で、私が説明したあるスポットについてどれだけ理解できているかをアウトプットしてもらったところ、その人はうまく言うこでができませんでした。
そこでこちらが改めて説明すると「そうです、そうです」という。
この人は、頭では理解できているけれども、それを言語化することができていなかったのです。
これでは、お客様に説明ができるわけがありません。

なので、説明を「うんうん」と聞くだけではなく、聞きながら自分なりに要点をまとめるという作業をすることによってアウトプットできるようになります。

また、言語化することにより、自分が理解できていない部分を確認することができます。
例えばそれがいつ頃起こったのかとか、話に登場するAさんとBさんの関係は何だったのかなどです。

そうすることによって、「知識の穴」が埋まっていきます。

アウトプットには大量のインプットが必要

ガイドにはアウトプットをする事が必要なのは先ほどお伝えした通りですが、インプットも重要です。

私は時間の許す限り、研修ではなるべく細かいところまで説明をするようにしています。
専門用語を理解できていない人がいればその説明をしたり、なぜそのようなことが起こったのか、その時代背景を説明したりして、より深く理解できるように心がけています。

ガイドと研修は似て非なるものです。
お客様と受講生はまったく質が違います。

お客様は楽しみにしています。
受講生は学習をしに来ています。
それを理解せず、たとえば、お客様に研修の時と同じような説明をすると飽きられてしまいます。
逆に、研修生にお客様を案内する時と同じようにすれば、受講生は物足りなく感じます。

私は、受講生から「分かりやすかった」と言われる講師は失格だと思っています。
この言葉の裏には「情報量が少ない」という意味が込められていることが多いからです。
目の前にいる人の年齢が自分の予想よりも高かった場合に、相手を配慮してよく使う「落ち着いて見えますね」と言うのと似ています。

講師の中には「受講生はまだ知識がないから、できるだけ平易に」と考え、アウトラインしか言わない人がいます。
しかし、受講生の中にはすでに知識が豊富な人がいることもあります。
それを講師が勝手に「受講生は知識がない」と決めつけて話をするのは間違っていると思います。
そう決めつけている人は、さらに上を目指している人の芽を摘み取ってしまっています。

与えた情報を入れる、入れないは受講生が決めることです。
子供ならまだしも、これまでの人生の中で様々なことを学んできている大人を相手にする時は、講師が受講生のレベルを勝手に決めないことが重要です。

大量インプットが重要なのは、聞いた話を100%再現できる人はそういないからです。
たとえば、情報量が100あるうちの50しか言わなかった場合、聞いた人が再現できるのはせいぜいその半分くらいです。
これが仮に、100伝えれば、半分とまでは行かなくても25以上は再現できます。
それをさらに、その周辺知識まで含めて120伝えると、さらに再現できる数字は上がります。

それを、50しか教えてもらえていなかった人の場合のその説明は、内容が薄っぺらいものになってしまいます。
そうならないようにするためにも、できる限り詳しく伝えることが重要です。
ただし、そうは言っても相手の反応を見て「これを今話すと混乱するな」というようなややこしいことはあえて言わないようにしています。
相手の理解度に注意しながら話すことも重要です。

数少ないチャンスをものにするには

「50の説明を聞いて、あとは自分で調べればいいじゃないか」という声が聞こえて来そうですが、それは違います。

聞いたことを記録する方法は、メモだけではありません。
メモを取ることは重要ですが、後で整理する時に自分の書いたことでさえ、何のことを書いているのか分からないことがよくあります。

一番効率がいいのは録音する方法です。

メモをする能力は所詮限界があります。
50の話を聞いてもメモの漏れは絶対にあります。
結果的に、すでに聞いた50のことでさえ調べなければいけません。
一方、録音であれば一回聞いて理解出来なかったことも、繰り返し聞くことによって理解できるようになります。
聞き逃しもありません。
そういった意味でも、なるべく詳しく説明することが重要なのです。
「人間の集中力の持続時間は金魚以下」という研究結果もあります。
研修の数時間の間、全集中することは不可能です。

こうした理由から、数少ない研修を1回でものにするには、録音が最良・最強の方法です。
この方法は時間がかかるのが難点ですが、録音したものがあれば極端な話、一度でそのコースを案内できるようになります。

もちろん、土地勘が必要なのでたくさんの下見は必要ですが。

今はまだ武漢熱の関係でゆっくりと知識を入れることができますが、この状況が収まった時にいかに早く新人ガイドを現場に送り込むことができるかが、今後の鍵になると、私は思っています。

なので、少ない研修を一発で自分のものにするためにも、録音するという方法は最良です。

ただし、録音を嫌がる人もいますので、予めお断りをしておくことは忘れないようにしてください。

アウトプットについて、こちらの本をご紹介しておきます。
興味のある方は読んでみてください。

学びを結果に変えるアウトプット大全 (サンクチュアリ出版)


多様な文化的背景の違いを理解する25

ハチ刺され

那智の大門坂から那智大社に向いて歩いていた時でした。
大門坂を上りきり、熊野交通のお土産物屋さんがある所に差し掛かった時、突然お客様が叫び声を上げました。

「ハチに刺された!」

飛び去るハチを見ましたが、キイロスズメバチでした。
このキイロスズメバチ、私も上高地の河童橋を歩いている時に、歩いているだけで刺された経験があります。

ハチに限らず、虫に刺されるケースがたまに発生します。

蚊やアブなら虫刺されの薬を塗れば事足りますが、ハチにいたっては「特効薬」なるものが存在しないので対処に困ります。
ポイズンリムーバーは持っていましたが、効果のほどは定かではなく「効かない」という見解もありますが、何もしなければ「あのガイドは何もしてくれなかった」とクレームの対象になる可能性があります。

そこでポイズンリムーバーで「パフォーマンス」をし、虫刺されの薬を塗って対処しましたが、はっきり言って、そんなことをやっても効かないでしょうね。

薬局で聞いてみたところやはりハチ刺され専用の塗り薬というものはないということでした。
とりあえず、一番効果が期待できるものを持つようにしています。

【指定第2類医薬品】ムヒアルファEX 15g ※セルフメディケーション税制対象商品

ガイドの持ち物については、こちらを参照してください。

https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2020/05/09/%e7%86%8a%e9%87%8e%e5%8f%a4%e9%81%93%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%89%e3%81%ae%e6%8c%81%e3%81%a1%e7%89%a9/

多様な文化的背景の違いを理解する24

身内の死

ツアー中に、お客様の弟さんが亡くなったという知らせが入りました。
そのお客様はツアー3日目に急遽帰国することになりました。

男湯、女湯間違い

男湯、女湯で違う趣を楽しんでいただくため、ある一定の時間で男湯と女湯を入れ替える宿があります。

なので、たとえば前日に入った男湯が、翌日の朝には女湯に変わっています。
宿に到着した時、宿からはその説明があるのですが、おそらくこのお客様(男性)はきちんと聞いていなかったのでしょう。
朝、そのお客様がお風呂からあがり、脱衣場で女性客とばったり鉢合わせになったそうです。

この日はそのお客様たちと宿で待ち合わせということになっていたので、自宅から車を走らせていたる時に電話がありました。

「メンバーの一人が間違って女湯に入り、女性客と出くわしてしまった。これ以上ここにいるわけにはいかないので帰国することにした。今日と明日の歩きはキャンセルにしたい。すまないが紀伊田辺駅までタクシーを呼んでくれないか」という内容でした。

この知らせを聞いて正直、驚いたと同時にホッとしました。
なぜなら、この記事を含む直近2つのトラブルは、同じお客様だったからです(笑)

https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2021/02/05/%e5%a4%9a%e6%a7%98%e3%81%aa%e6%96%87%e5%8c%96%e7%9a%84%e8%83%8c%e6%99%af%e3%81%ae%e9%81%95%e3%81%84%e3%82%92%e7%90%86%e8%a7%a3%e3%81%99%e3%82%8b%ef%bc%92%ef%bc%92/
https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2021/02/08/%e5%a4%9a%e6%a7%98%e3%81%aa%e6%96%87%e5%8c%96%e7%9a%84%e8%83%8c%e6%99%af%e3%81%ae%e9%81%95%e3%81%84%e3%82%92%e7%90%86%e8%a7%a3%e3%81%99%e3%82%8b%ef%bc%92%ef%bc%93/

タクシーの予約をし、私は最後のお別れをするため紀伊田辺駅で待つことにしました。

本当にすまなかったと侘びてくれ、「まだ歩いていないところがあるから、まだ絶対に戻ってくる」と言い残し、彼らは田辺駅を後にしました。

正直、この人たちを二度と案内したくありません(笑)

この他にも、ツアー初日の午前中(この日は午後から会う予定)に、「昼まで時間がたくさんあるから、今から田辺市内を案内してくれないか」と言われたり、宿は個室にしてくれとか、継桜から本宮大社までの翌日の出発時間に異議を申し立てられたりと、ツアー中は散々振り回されました。

こういったお客様の傾向として、初日から面倒なことを言ってくることが多いです。
なので、お客様がどういった感じの人たちなのかは初日でだいたい判断がつきます。

「あ、今回は面倒なことが起こりそうだな」と身構えると、少しはダメージが楽になりますよ(笑)

多様な文化的背景の違いを理解する23

二日酔い

朝、約束の時間に宿に行くと、「相談がある」と言われました。

話を聞くと「昨日酒を飲みすぎて二日酔いで歩けない。でもスタンプは欲しいので誰かスタンプを押す人を雇ってくれないか」と言われ唖然としました。

人間、予想もしないようなことが起こると咄嗟の判断ができなくなる時があります。

このお客様たち、いや、コイツらはスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラを歩いており、「次は熊野古道」ということで、共通巡礼証をもらいに来ていました。
なので、熊野古道の達成条件をクリアするためにどうしてもスタンプが欲しい、しかし歩けないという、何とも甘えた奴らでした。

私はここで大きな後悔をすることになります。

スタンプを押す人間などその日に急に言われて雇えるわけもなく、結局わたし一人が歩いてそのコースのスタンプを押し、彼らには本宮大社で待ってもらうことにしました。

何であの時そのような判断をしたのか、自分でもよく分かりません。

きっぱりと突っぱねて叱りつけてやるべきでした。

そして、「ズル」をしてコイツらは巡礼を達成するのかと思うと腹が立って仕方がありませんでした。

本宮大社で神妙な面持ちで太鼓を叩いている奴らの姿を見て、何とも情けない気持ちになりました。

いくら楽しみに来ているとは言え、旅であっても、ましてや熊野古道を歩くのですから、健康管理を自身の責任ですることは当たり前のことです。
それが出来ていない人は、歩く資格はありません。
子供ではないのですから、それくらいのことはわかっていて当然です。

当たり前を疑え(知識の積上げ法)

今日で和歌山県の高野・熊野地域通訳案内士の現場研修が終了しました。
みなさん無事に終えることができ、ホッとしています。

さて、研修の中で「どのようにして知識を蓄えるのか?」という質問を何回かいただきましたので、お答えした内容を共有いたします。

語り部さんに案内してもらう

知識は様々な方法で得ることができます。

本、インターネットなどがありますが、一番手っ取り早いのが地元の語り部さんにお金を払って案内をしてもらうことです。

「え?そんなことなん?」と思われたかもしれませんが、情報というものはだいたい、有料のものと無料のものでは質が違うというのが普通です。
語り部さんは知識が本当に豊富で、色んなことについて詳しく教えてくれます。

語り部さんの料金の相場はコースや所要時間によっても違いますが、だいたい1万円~1万5千円くらいです。

だたし、もっとお得に案内をしてもらいたい場合は、コースは限られますが、大門坂~那智の滝であれば熊野那智ガイドの会さんの「那智山周遊サンデーウォーク」、本宮語り部の会さんの「朝一語り部」があります。

那智山周遊サンデーウォークは、大門坂~那智大社・青岸渡寺~那智の滝で、朝8:55に大門坂駐車場に集合、予約なしで参加できます。

朝一語り部のコースは発心門王子~本宮大社で、先着6名の予約制です。
※現在、本宮大社前~発心門王子間の路線バスが運休している関係で、2月いっぱいは中止です。

料金はいずれも一人1,000円です。

はっきり言って、破格です。
こんな料金で質の高い案内を受けることなんて贅沢すぎます。

研修の時にはお知らせしませんでしたが、語り部の会熊野古道中辺路さんも、滝尻~本宮大社までを数回に分けて格安で案内するイベントをしていますし、紀伊路であれば紀伊路語り部の会さんも「語り部と歩く紀伊路130km」というイベントを開催していました(次回あるのかどうかは分かりません)
大辺路では、大辺路刈り開き隊さんも大辺路をはじめその周辺のウォーキングイベントを開催しています。

こういった語り部団体さんのイベントに参加するという方法もいいと思います。

ただし、参加人数が多い場合などは詳しく案内を聞けないこともあるようです。
そうなりたくない場合は、仲間数人で語り部さんを「貸し切り」にして案内してもらうといいと思います。

お客様からの質問

もう一つの方法は、お客様からの質問です。
お客様はもちろん、「外国人の目」で物事を見ます。
その時に不思議に思ったことなどが質問にあがってくることが多いです。
なので、例えば下見などをしている時に「日本人の当たり前に疑問を持つ」という癖をつけておくといいです。

例えば、お寺やお堂に貼ってある名前を書いたステッカーのようなものがあります。
「千社札(せんじゃふだ)」というものですが、その意味を聞かれたことがあります。
あなたは答えられますか?

あとはお墓に置いている卒塔婆とか、お地蔵さんのよだれかけなど、目についたものすべてがお客様にとっては「なぜ?」なのです。

普段からそういった癖をつけておくことで、下見をした時に「こういった質問が飛んできそうだな」という予想ができるようになってきます。
また、コースによって同じような質問をされることが多いので、案内する回数が多ければ多いほどそのコースの「知識の穴」がなくなってきます。

こうして、お客様からの質問のおかげで、私はかなり鍛えられました。

また、質問は熊野に関することだけではありません。

「なぜ日本の自動車は左側通行なのか?」と聞かれたこともあります。
そう、お客様の「なぜ?」は、その地方だけのものではないのです。

自動車の左側通行やその他の質問に対する答えは以下の記事を参照してください。

https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2020/05/20/%e3%81%8a%e5%ae%a2%e6%a7%98%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e8%b3%aa%e5%95%8f/



多様な文化的背景の違いを理解する22

薬切れ

来日の10日前に、お尻の手術を受けたお客様がいました。
よせばいいのに、まだ傷口がきちんとふさがっていない状態で、抗生物質の投与をしながら日本に来てしまいました。

話を聞くと、彼は5人グループのオーガナイザーで、行程管理は彼が握っていたのでどうしても来なければいけなかったらしいです。
ちなみに、このグループは彼以外すべて大会社を経営する社長さんたちでした。

ツアーは5日間でしたが、2日目くらいから彼のお尻が痛みだしたようで、継桜に到着するや「マッサージはないか?」と聞いて来ました。

「あるわけ無いやろ」といいたかったですが、「一生懸命探している」というパフォーマンスはしなければならないので、宿の人に聞いたりしていました。

それはさておき、3日目にいよいよその抗生物質が切れたらしく、かなり痛がっていました。「薬局に連れて行ってくれ」と言われたので本宮の薬局にお連れしたのですが、抗生物質は医師の処方箋がないと出せないと言われ、その旨を伝えると今度は「病院に連れて行ってくれ」と言われました。

しかし、この日はあいにく土曜日。
本宮のクリニックが開いているはずもなく、私もどこが一番近いかを聞くために消防署に尋ねたところ、新宮か田辺だという回答でした。

新宮へは車で45分、田辺は1時間以上かかります。

新宮の当番の病院に電話をすると、あいにく対応できる医師が帰ったところでした。
そうなれば、車で1時間以上かけて田辺に行くしかありません。

そのことを彼に伝えると「ここは日本だろ!コロンビアではない!」と激怒し始めました。

そんなことを言われても、ここは田舎。
仕方ないものは仕方ありません。
どうも彼は、日本ならどこでも気軽に抗生物質を手に入れることができると思っていたらしいのです。

明日なら新宮の◯◯という病院が開いている。それまで我慢できるか、と聞いたところ「我慢できる」と観念したため、翌日お連れをしましたが、手術を施した担当医とチャットでやり取りをしていたところ、その医師から「帰国命令」が出て敢えなく帰る羽目になってしまいました。

せめて日本滞在期間分の薬は持って来い!(笑)

多様な文化的背景の違いを理解する21

リタイヤ

今まで約600回案内してきた中で4回しか経験がありませんのであまり例がありませんが、たくさんガイドをしていると遭遇するトラブルがリタイヤです。

7泊8日のツアーの4日目、継桜~本宮大社で起きました。

このお客様は、2ヶ月前に足の小指を骨折していましたがほぼ治っており、ツアー3日目までは問題なく歩いていました。
むしろ早い方のグループに混じって歩いていました。

4日目、岩上峠を歩いている時、「今までリタイヤしたお客さんはいるか?」という質問を受けました。
なんかおかしいなと思いながら「いいえ、幸運にも今までありません」と答えると突然泣き出し「やめたいかも」と言い出しました。

やめると言っても山の中です。

今なら1kmほど歩けばバス停がありますが、土地勘のないお客様だけで行かせることはできません。
また、そのお客様をお連れしても歩き組を放っておくことになり、どうしようもありません。
こんな時、ガイドが一人だと何も出来ないのです。

このグループは8人。
中辺路ルートをガッツリ歩く行程です。
旅行会社さん、こんな時は絶対に2人ガイドが必要です。

岩上峠を上りきったところでお客様の両足のふくらはぎが痛み出しました。
なんとかごまかしてお客様を励まし、発心門王子のバス停まで歩いてもらうしかありませんでした。

お客様もよく頑張りました。
ようやくの思いで発心門王子に到着し、バスの時刻を伝え、本宮大社前で待ち合わせる約束をし、電話番号を聞いてお別れしました。
途中、不安なので連絡をします。
もちろん国際電話になりますので費用はバカ高くなります。

このお客様とは別にもうひとり、向こう脛の横に筋肉に違和感を訴えるお客様がいたので、翌日の5日目にクリニックにお連れしたところ「歩き過ぎによる炎症」と診断されました。
話を聞くと、どうやらこのツアーの前に大阪で一日20kmほど歩き回っていたそうです。
それがここに来て発症してしまったようです。

結局、この2人が6日目から離脱。
別行動をしていただきました。

もう一つの例は、滝尻~高原間で起きました。

事前にお客様の一人が喘息持ちという情報がありました。

いざ出発すると、吸引器を取り出して歩き始めました。
嫌な予感が的中、とうとう不寝王子跡で私がリタイヤを進言しました。
このグループは5人。
地図でルートを説明をして残りのお客様を彼ら自身で歩いてもらい、掘割(ほりわり)で待ち合わせをすることにし、私はお客様を連れてもと来た道を歩いて下りました。

下山し、宿に連絡をして迎えに来てもらい、お客様を送り届けたあと、宿の方に再び掘割まで送ってもらいました。
まだお客様が見えていなかった(私がいなくても絶対にここで待つように言っていました)ので、掘割から滝尻方面に向かって歩いていると、お客様と無事会うことができました。

あとの例は、過去に記事がありますので、そちらをご参照ください。

https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2018/12/03/guideexperience-emergency/
https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2020/12/06/%e4%bb%8a%e5%9b%9e%e3%81%ae%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%89%e3%81%ae%e5%8f%8d%e7%9c%81%e3%81%a8%e8%aa%b2%e9%a1%8c/

普段は楽しいガイドですが、一度リタイヤが出ると対応に追われ楽しい気分が吹き飛んでしまいます。
リタイヤしたお客様は気持ちも沈んでしまいます。
そのお客様をどうやって最小限のダメージで抑えるか、また、いかに残ったお客様を楽しませるか、不安にさせないかがガイドの力量を問われるところだと思います。