多様な文化的背景の違いを理解する⑳

道間違い

熊野古道で案内をしていると、大なり小なりおそらく誰もが経験することだと思います。
道を間違うことは本来あってはならないことですが、所詮人間なので間違うこともあります。

肝心なのは、間違った時にどのように対処するかです。

道を間違ったなら、正直に間違ったことを伝えれば、お客様は許してくれます。

ここで嘘を言ってごまかすということは止めておいたほうがいいでしょう。

また、道間違いではないですが、自分が歩いたことのない道を案内することはやめておきましょう。

骨折・打ち身・転倒

熊野古道を歩いていると、避けては通れない事故です。

私の経験でいうと、バスツアーで瀞峡の案内をしている最中で起こりました。

・・・この文言だけでは「は?」となりますが、骨折は期せずして起こることがあります。

ツアー中、船から下りて途中休憩するポイントがあります。
そこでトイレをしたり、写真を撮ったりして約15分過ごしますが、その休憩中に事故は起こりました。

行かなくてもいい階段を上り、下りてくる途中で滑って転倒し手首を傷めてしまったのです。
この時、悪いことは重なるものです。
私の携帯は、この休憩中に落として画面を割っており、使い物にならなくなっていました。
そこで、ジェット船の運転手さんに携帯を借りました。

下り坂、特に石畳や小石が多い所では要注意です。
別の事例になりますが、この時お客様とおしゃべりをしながら石畳を下っていて事故が起きました。
この日はちょうど前日からの雨で路面がまだ濡れており、滑りやすい状態だったのです。
今なら、下りの前にはお客様に十分注意を促しますが、その頃の私はまだ駆け出しの頃で、その注意喚起をすっかり失念していました。
そんな時に限って事故じゃ起こるものです。

お客様は肘を強打し、その肘が腫れてきました。
しかし、現場は山中で周りには何もない所でした。
アイシングするにもそんな道具は持っておらず、沢の水にハンカチを浸して患部に当てることくらいしかできませんでした。

以後、私は下り坂ではおしゃべりをしないようにしています。

しかし昨年、その緊張が解けた時に、再び事故が起きました。
気を許してついおしゃべりをしてしまったことによって、お客様も気が緩んだのでしょう。
転倒した時に足を捻って骨折してしまいました。

事故というものはだいたい、気の緩みから起こります。

逆に、注意をしている時はあまり起こった経験がありません。

オーストラリアのお客様をお連れしている時、お客様がどうしても16時に本宮大社に到着したいとの申し出がありましたが、このままでは無理だということをお伝えすると、「じゃあ、走ろう」とお客様から言われました。
よせばいいのに「では行きましょう」と言った私が馬鹿でした。

道中、お客様が木の根に引っかかって前のめりに転倒し、そこにあった石に口をぶつけてひどい出血が始まりました。

しかし、不幸中の幸い?で、このお客様が医師だったこともあり、「自分で手当をする」と言って、ガーゼと新しいペットボトル入りの水をお渡しすると、自分で処置をしてくれました。

「I was stupid.」と言っていましたが、お客様を走らせたことによって怪我をさせた私の方が愚かでした。

あと、私の団体のガイドの案内中に、お客様が木の根に引っかかって転倒し、その際に手を突っ張って骨折したケースもあります。

また、木の根は雨が降ると滑りやすくなりますので、さらなる注意が必要です。

多様な文化的背景の違いを理解する⑲

食べ物(食事制限のメニューが出される)

欧米のお客様は食事制限のある方が多いです。
単なる好き嫌いもありますが、中には重篤な症状を引き起こすことがある場合がありますので特に注意が必要です。

お昼のお弁当は、おにぎりといった簡単なものが多いのであまりないですが、スルーガイドなどで宿で出される夕食ではたまにお客様がダメなものが出されるという事があります。

これには2つの理由が考えられます。
まずは旅行会社から宿に情報をお伝えしているにも関わらず、宿が失念してしまっている場合です。
お客様がダメなメニューが出てきてしまった場合は、宿の方にお伝えはしますが、だいたいの場合は代わりの物が用意できず、そのお客様は普通のお客様よりも少ない品数で・・・ということがほとんどです。
こうなってしまうと、せっかく旅のひとつの楽しみでもある食事の時間が台無しになってしまいます。
自分が食べる物が少なくなって怒るお客様はいなかったですが、やはり心の中は穏やかではないはずです。

もう一つの理由は、お客様自体が旅行会社にすら伝えていなかった場合です。
たまたまガイド中に食事の話になり「私はこれがダメなの」と、そこで初めて分かる時があります。
依頼書を確認してもそういったことは書かれていません。
当日のメニューがどんなのもか分かっていたので、すぐに旅行会社に電話をして宿に連絡を取ってもらいました。

あと、紛らわしい料理も出さない方が賢明かもしれません。

以前、グルテンフリーのお客様の食事に、米粉で揚げた天ぷらが出てきたことがありました。
それを見たお客様は「これ、小麦でしょ!」と、少し興奮気味でした。
宿のスタッフからは米粉という説明が事前にあったのですが、結局そのお客様は天ぷらをを食べませんでした。

現場研修【発心門王子~本宮大社】が終了しました

和歌山県の高野・熊野地域通訳案内士育成研修の一環である、熊野古道の現場研修・発心門王子~本宮大社が終了しました。

心配されていた天気も申し分なく回復し、前日の強風・寒波とは打って変わって無風快晴になりました。
やはり持っている男はひと味違います。

肝心の研修ですが、参加された皆さんも熱心に説明を聞き、質問も結構受けました。
中には答えられない質問もあったので、今後の課題も増えました。

いつも思いますが、ガイドは「これで終わり」という地点がありません。
いつになっても答えられない質問が出てきますし、新たな課題が出てきます。

しかし、この経験が今後の自分の知識となって生きてきます。
この6年、私はこの積み重ねでやってきました。
その意味では、今回は私にとっても収穫のある研修となりました。

最後の質疑応答ででたいくつかの質問をご紹介します。

知識はどうやって増やしていけばいいですか?

まず、あなたの得意な知識を深めていくといいと思います。
得意な知識であっても、たくさんの枝葉の部分が出てきますので、それを突き詰めていくといいと思います。

その知識を深めた上で、他の知識もまんべんなく増やしていくといいと思います。
私は神社や神様の事にもともと興味があり、それが高じてガイドになった部分もあります。
なので、もともと得意分野がお持ちであれば、まずはそれを高めるといいと思います。

しかし、知識と言っても自分の得意でない分野も当然あります。
ガイドの中には「私は草木のことは得意ではないので説明はしない」とか「歴史については説明をしない」と言っている人もいます。
もし、お客様が目についた木について聞こうと思って聞いたら「知りません」では困ります。

お客様のニーズは様々ですので、そのニーズに応えられるようになるためには、やはり知識はまんべんなく持っておく必要はあります。
得意ではにい分野についても、必要最低限答えられるようになっておくといいと思います。

あと、得た知識は要約してアウトプットすることです。
聞いた話や本を読んだら、その要約をアウトプットすることによって知識が定着します。
聞きっぱなし、読みっぱなしではダメです。

多様な文化的背景の違いを理解する⑱

バス停間違い

バス停間違いは、私がお客様をお連れしている時に間違ったこともありますし、お客様とお別れして、お客様自身で移動する際に起こったりしました。

大きな理由は2つです。

一つは、紛らわしい名前のバス停があったということです。

今は随分と改善されていますが、以前は名前が紛らわしいバス停がいくつかあり、日本人でさえも間違うほどでした。

例えば、「熊野本宮」と「本宮大社前」、「発心門」と「発心門王子」、「大門坂」と「大門坂駐車場」、「那智駅」と「那智駅前」など、たとえ「発心門王子」と旅会社から渡された行程表に書かれていても、バス車内のアナウンスで「発心門」と聞けば降りてしまうでしょう。

また、乗り換えをするのに、降りた場所が同じで違うバス停から

お客様と本宮大社前でお別れし、お客様が那智まで自身で向かうことになっていたので、そこまでのバスをご案内したのですが、うっかり

以前、香港のお客様でしたが、「大門坂駐車場」待ち合わせなのに約束の時間に現れず「もしや」と思い「大門坂」バス停まで歩いて行くと向こうから歩いてくるお客様とお会いしました。
漢字が読める香港のお客様でもこうです。
こういったことが以前はよく起こっていまいた。

ちなみに、現在は「熊野本宮」が「大日越登り口」に、「発心門」が「発心門口」に、「大門坂」と「那智駅前」はなくなりました。
ただ、「発心門口」「発心門王子」は外国人には発音の区別が難しいため、いまだに間違って降りようとする人が跡を絶ちません。
名前を変える前に、うちに相談してくれればよかったのに(笑)

もう一つの理由は、同じ名前のバス停でも、乗り換えの際の降車のバス停と、乗車のバス停が違うということです。

大雲取越の登り口の集落・小口(こぐち)に向かう際、神丸(かんまる)というバス停で降りて乗り換えをしなければなりません。
ここがイレギュラーなバス停で、本宮方面から来て神丸で降りたら、50mほど離れた別の「神丸」から乗り換えなければならない場合があります。
これがややこしいのですが、同じ本宮方面から来ても、朝の便は降りたバス停と同じ所から乗車します。

この、約50m離れたバス停は、新宮方面から来たバス専用です。
まだ駆け出しの頃、本宮方面から来た私たちは、おしゃべりにも夢中になったこともあり、そんなバス停の存在をすっかり忘れ、ただひたすらバスが来るのを待っていました。

完全な思い込みです。

しかし、到着時間が来ても一向にバスは来ません。
5分、10分・・・
「はっ!」と思った時はすでに遅し、新宮方面から来たバスはとっくに走り去ってしまった後でした。

藁をもすがる思いで宿に電話をかけると迎えに来てくれたのでなんとかその場は収まりましたが、夕方の忙しい時間帯に宿の方に余計な仕事をさせてしまい、反省しきりでした。

もう一つの事例は、お客様夫婦が自身で本宮大社前から那智山の宿まで路線バスで移動しなければならない行程の時、別れ際に乗り換えのバス停をご案内したのですが、うっかり「降りたバス停と乗るバス停が違う」ということをお伝えするのを忘れてしまいました。

翌日お会いした時、奥様が「昨日の話をしてあげて」と、ご主人に含み笑いで話し「じつは昨日・・・」と前日に起こったことを話してくれました。
乗り換えるべき「那智駅前」で降りたまでは良かったのですが、那智山方面に行くには同じ敷地内の「那智駅」から乗らなければなりません。
お客様は、降りた「那智駅前」でバスを待ち、やってきた「紀伊勝浦駅行き」に乗って勝浦駅まで行ってしまったそうです。

結局、そこからは那智山方面のバスが出ていますので、チェックイン時間には間に合ったそうですが、申し訳無いことをしてしまいました。

多様な文化的背景の違いを理解する⑰

荷物搬送

熊野古道を歩く際に便利なサービスとして荷物搬送があります。
海外のお客様は特に大きな荷物を持たれて旅をする方が圧倒的に多いです。
そんな荷物を、宿から宿へ当日中に運ぶサービスです。

海外でも、スペインのカミノを歩いた際にはありましたが、あまりお客様には馴染みがないせいか、「ちゃんと宿に届くよね?」と半信半疑のお客様もちらほらいました。
海外では「バゲージロスト」が結構起きているため、不安になるのでしょうね。

そんな荷物搬送でよくあるのが「荷物の増加」です。
まあ、これはトラブルとは言えないですが、旅をしているとどうしても荷物が増えていきます。
荷物搬送は、1個あたりに料金がかかるところがほとんどです。
お客様と会ってからガイドをしている時に、旅行会社から「3個口ですが、4個あるので、追加料金をお客様から現金で預かってもらえませんか」という電話が入ったりします。

あとは「預けるべきところに預けなかった」ということも起こります。
これは特に初日に起こります。

こんな例がありました。

お客様はこの日、自身で大阪から電車で来て、紀伊田辺駅からバスに乗り本宮に移動し、私たちは熊野本宮館でお会いする予定でした。

荷物は電車を下りた紀伊田辺駅近くの店舗に預ける予定でした。

きちんとガイド依頼書にもそのことが書かれていましたので、当然私もそのことは把握していました。

本宮館で待っていると、それとおぼしき3人組が歩いていました。
しかし、荷物を引きずっていたので「これは違う」と思っていましたが、その3人組がお客様だったのです。

事情を聞くと、どうやら熊野本宮館に預けると勘違いしていたようで、紀伊田辺駅近くの店舗に預けずにバスに乗り込んだらしいのです。

当たり前ですが、大きなスーツケースを引きずって熊野古道を歩くことなんてできませんので、紀伊田辺駅からの分はキャンセル(搬送料はお客様都合によるものなので返金なし)で、追加料金を支払って熊野本宮館から湯の峰温泉の宿まで搬送という形になりました。

どちらが悪いとかそういう問題以前に、すでにこの時点でお客様の機嫌は最悪状態でした。

こういった状態からガイドを始めるのは、一旦沈んでしまったテンションを上げて行かなければならないため、その分ハードルが高くなります。
最初はどうなることかと思いましたが、最終的には楽しんでいただけたようでホッとしました。

ちょっと話はそれますが、ある京都のホテルの総支配人さんから聞いたお話でも似たような例がありました。

詳細は忘れてしまいましたが、このようなお話でした。

お客様が京都駅に到着、ホテルまでバスに乗ろうにもどのバスに乗っていいのか分からない。
タクシーに乗ろうにも行列ができていてなかなか乗れない、などのちいさなイライラが募っていたところ、フロントのチェックインではまた行列、そしてついにその怒りがホテルで爆発・・・。
もっとこのお客様をイライラさせる原因があったと思いますが、詳しいことは忘れてしまいました。

この場合、ホテル側にはお客様を待たせてしまったことにも原因がありますが、それより前に「前兆」があったということです。
この場合は、お客様が爆発したことにより、ホテル側が親身になってお客様の話を逐一聞いてあげることによって原因がわかったそうです。
ガイドをする時、お客様とお会いした時点でもし機嫌が悪い感じがするなら、それとなく聞いてみるのもいいのかもしれません。

ただ単に愛想が悪いだけかもしれませんが(笑)

多様な文化的背景の違いを理解する⑯

お客様とのイメージのミスマッチ

これは当法人のガイドから聞いたもので、トラブルと言っていいのかどうか分かりませんが、取り上げました。

「今からこのアスファルトの道を歩くのか?」

フランスのお客様でしたが、このお客様は「熊野古道イコール自然豊かなところをトレッキングする」というイメージがあったようです。
熊野古道のガイドであればそういったところばかりではないという事は知っていますが、中にはこういったお客様がいることも事実です。

このお客様は当日は発心門王子から本宮大社までのコースの予定でしたが、その日のガイドが機転を利かせて急遽すべて自然の中を歩く赤木越に変更をして難を逃れたそうです。

私も「私がイメージしていたものと違う」という話を聞いた事があります。
私たちの認識とお客様との想像にギャップがあることは完全に避けられないですが、ある程度だいたいのイメージが想像できるように事前にお伝えしておく必要はあります。

滑落

お客様の滑落、私の経験で2回あります。

それも同じところで。

石畳などはよく注意をしますが、小石もなかなかの曲者です。
現場は小石がたくさん落ちている下り坂ですが、つづら折れになっているので、落ちたお客様を下から受けたり、木に引っかかって山の下まで落ちるということがなかったことが不幸中の幸いでした。

また、トレッキングシューズによって滑りやすいものがあります。
同じ所で他の人が滑っていないのに自分だけが滑るというようなことがあれば、思い切ってその靴は見切りをつけましょう。
「買ったばっかりなのに」と思われるかもしれませんが、怪我をして痛い思いをして治療代を払うことを思えばかえって安上がりになると思います。

あと、聞いた話では傘を差しながらおしゃべりに夢中になって歩いていた時に、風に煽られて落ちたお客様がいたそうです。
傘差しやおしゃべりは否定しませんが、歩くことがおろそかにならない程度にしておかなければなりません。


多様な文化的背景の違いを理解する⑮

今日は熊野でのトラブルの事例についてお話をします。
私が実際に体験したことと、仲間のガイドから聞いたお話を中心にご紹介します。
実際にあったトラブルを事前に知っておくことで、実際に起こってもうろたえることなく対処できるようになると思いますので、ぜひご参考にされてください。

知識不足

「今日のガイドは現地の事も知らないし、聞いても質問の意味が理解出来ていないという苦情をいただいた。次回からはあのガイドさんはアサインから外していただきたい」

これは旅行会社から実際に挙がった苦情です。
クルーズ船のオプショナルバスツアーで、バスで那智を訪れる行程でした。

バスでの案内は難易度が高く、基本的に大勢のお客様と対峙しなくてはなりません。
バスツアーは、以前の記事でお伝えした、様々なお客様が集まってくる募集型ツアーの典型です。
様々なお客様のニーズ全てに応えることは難しいというか不可能ですが、なるべく苦情が出ないように配慮する必要があります。

その基本となるのが「双方向での案内」となります。

お客様に質問を投げかけコミュニケーションを取り、全体を巻き込んでいくとうまくいくことが多いです。

おそらく、この時のガイドさんはこれに欠けていたのでしょう。

また、その方のスキルを把握しないでアサインをした私の責任でもあります。

資格は関係ない

旅行会社からは、全国通訳案内士ばかり8人でお願いしたいという強い要望がありました。
しかし、うちだけでまかなうことができず、他のガイド団体に応援を要請しました。
その方は全国通訳案内士と英検1級の資格をお持ちでしたが、これが落とし穴でした。

全国通訳案内士の資格を持っていても熊野に精通しているとは限りません。
英検1級を持っているからといってもネイティブが言っていることを理解できるわけではありません。

このツアーが始まる前の打ち合わせの段階で、「高野・熊野地域の通訳案内士でも、熊野においては全国通訳案内士よりスキルが高いガイドが大勢います」と提案をしたのですが、先方が全国通訳案内士にこだわるあまり、このような結果になってしまったのだと思います。

当たり前ですが、ガイドは資格で能力が決まるわけではありません。
経験、知識の豊富さ、コミュニケーション能力、適切な状況判断能力など、様々な点を総合的に合わせたものがその人のスキルになるわけです。

この一件があってから再度、高野・熊野通訳案内士を旅行会社に提案をしたところ、次の回からは採用されました。

素直に人の提案は聞いておくものですよ(笑)


多様な文化的背景の違いを理解する⑭

コミュニケーションのポイントの続きです。

英語を母語としないお客様への注意点

難しい単語を使わない

英語を母語としないお客様の中には、ネイティブ並の素晴らしい英語力を持つお客様も少なくはないですが、多くのお客様は私たちと同じく、聞けて話せても「英語は外国語」というお客様です。

こういったお客様に、「神仏習合」の「syncretism」と言っても通じないことが多いです。
なので私は「harmony」とか「fusion」を使ったりしています。
ちなみに以前、オーストラリアのお客様に「harmony」という言葉を誤って?使った時、「それはいい表現だね」と言われたことがありますので、ネイティブの方にもよく分かっていただけるようです。
「いい表現」とは、他の宗教対立のようにいがみ合うことなく、平和裏に調和が保たれているからという意味でこのお客様はおっしゃっいました。

通訳がいる場合

通訳がいる場合も、通訳に対する配慮が必要です。
通訳といっても、それぞれのレベルが違います。
ガンガン喋っても難なく通訳できる人もいれば、私のようにある程度で区切ってもらわないと訳せない人もいます。

そのレベルを見極めるため、始めのうちは少ししゃべって「まだ大丈夫?」と確認するようにします。
OKなら「もっと話していいよ」などと言ってくれますし、いっぱいいっぱいであれば「ちょっと待って」と言ってくれます。

通訳がいる場合、こうした通訳とのコンビネーションも必要になってきますし、通訳する分時間も余計にかかります。
単純に倍です。
なので、時間管理にも注意が必要です。

多様な文化的背景の違いを理解する⑬

一方的に話さない(たまに質問を入れる)

初心者、ベテランに限らず起こしがちな注意点として、一方的にまくしたてるように話す人がいるということが挙げられます。
「一方的な話」の代名詞として、全校集会での校長先生のお話がありますが、あなたはあれをありがたく聞いていましたか?

一方的に話されるというとは、聞く方は苦痛でしかありません。
和歌山地域通訳案内士会では、「説明は2分まで」としています。
これ以上長くなってしまうとお客様が退屈するからです。

お客様は、最初のうちは相手の話を理解しようとはしてくれますが、その集中力にも限界があります。
お客様が話を聞いてくれるように仕向けるには、双方向の説明、つまり適度に質問を入れたりしながら話すように心がけます。

相手の目を見る

日本人は、あまり相手の目を見て話すことが得意ではない人が多いです。
私も以前はそうでしたが、ガイドの仕事を始めてそれを心がけるようになりましたので、今は随分と改善されてきました。

お客様が複数いる場合などは、誰か特定の人だけを見て話す人が多いです。
アイコンタクトをまんべんなくすることで、当然お客様は「私にも話してくれている」と思うようになり、こちらの話を聞いてくれるようになることが多いです。

また、説明をしている時、お客様を見ないで話す人がいます。
例えば、ある石碑で説明をしている時、その石碑をずっと見て話している人がいます。
結構やりがちなことで、自分では気づいていない人が多いです。
一番いい方法は、誰かに自分のガイドを見てもらうことです。

とにかく笑顔

「笑顔」は万国共通です。
とにかく笑顔で対応されることです。
特に初めてお会いする時は必ず笑顔で接することはいうまでもありません。
人は第一印象でほとんどその人の印象を決めてしまう傾向にあります。
このチャンスを逃さないようにしましょう。

無理なものははっきり断る

日本人ははっきりと断ることが苦手です。
相手を傷つけないように、なるべくやんわりと断ることが日本人の相手を思いやる心の現れであり、対日本人にはそのような対応が必要かと思いますが、対外国人となるとこれが通用しないことが多いです。

外国人ははっきりとイエス・ノーを述べますので、こちらが想像しているよりはっきりと答えても向こうはさほど気にしてしません。
むしろ「わかった」となります。
これが、「日本式」で遠回りに答えていると「何が言いたいのか分からない」となります。

また、ダメ元で無理なお願いをしてくる人もいますので、できないことははっきりと「ノー」ということです。
これを受けていると「ではこれも、あれも」と、どんどん付け入ってくることにもなります。

よくあるのが、自分が食べられなかったお弁当のおかずをあげたがることです。
「残すともったいない」という大義名分の元、本当は自分の荷物を少しでも軽くしたいという意図が見え見えで「Yoshi、これ食べる?」と言ってきます。
以前はすべてもらって食べていましたが、今ははっきりとお断りしています。

まあ、今挙げた事例は小さいことですが、「蟻の一穴」という言葉があるように、少し譲歩すると「こいつイケる」となる可能性もありますので、こういった小さなことでも妥協をしないいようにしています。

また、お客様が行程の変更を言ってくる場合があります。
その場合は、ガイドが独断で変更するとあとから旅行会社とトラブルになる可能性があります。
旅行会社には旅程保証というものがあり、そこは絶対に訪れるところだと決めている所もありますので、お客様から行程変更の申し出があった場合は、必ず旅行会社に変更可能かどうかの確認を取る必要がありますので注意が必要です。

それで無理な場合は無理とお断りしましょう。

お客様はその行程にどれだけの時間がかかるか分かりません。
それを考えずに、ただ単に「ここに行きたい」と言ってくる場合もあります。
明らかに時間的に無理な場合は、旅行会社に問い合わせる必要もなく「時間的に無理だ」とお伝えします。


多様な文化的背景の違いを理解する⑫

前回の続きです。
コミュニケーションにおけるポイントについてお話をします。

相手の話をよく聞く

自分の話を聞いてもらおうと思えば、相手の話にもきちんと耳を傾けるべきです。
ガイドの中には、説明ばかりしていて会話になっていない人も見かけます。
いくらガイドが知識を売る仕事だとは言え、ガイドとはお客様とのコミュニケーションがあって初めて成立するものです。

さらに、相手の話を聞いてそのままで終わるのではなく、要約をして確認をするとなおさらいいです。

例えば「僕の妻と出会ったきっかけは、友人のパーティーでだったんだ」というような話であれば「奥さんとは友達のパーティーで出会ったんですね」と、オウム返しのような感じでもいいので言ってあげると、相手は「この人は私の話を聞いてくれている」と思い、こちらの話にも耳を傾けてくれるようになります。

相手の話を遮らない

かつて読んだ本で、会話には「バスケットボール型」と「ボーリング型」があると書いていました。
この表現、的を得ていていいなと思いました。
バスケットボール型というのは、相手がドリブル(話)をしている時にそのボールを奪ってしまう、つまり話の途中で相手の話を遮って自分の話題にしてしまうことです。

一方、ボーリング型というのはピンに当たるまでボールの行方を見守ることです。
最後まで主導権は相手です。

結構多いのが前者のバスケットボール型です。
ガイドは知識があるあまりお客様が話していることに割って入りたくなる心理は分からなくもないですが、そこはグッとこらえて相手が話し終わるまで相槌を打つなどして聞くようにしたいものです。
中には、話の途中で全然自分が知らなかった話題に及ぶことがあり、その時私は「よし!これ、自分の知識になった」と心の中でガッツポーズをしています。

話には構成があり、前フリから始める人がいます。
その前フリは誰でも知っているようなことから始まりますが、話の核心はその後に来ることが多いです。
それをもし、あなたが話している最中に「あ、その話はこうですね。つまりそれは◯◯で・・・」と遮られたらどう思いますか?
せっかく核心の話をしようと思っていたことをそこで一気に崩され、相手のボールになってしまうわけです。

こうなれば、相手は核心を話すチャンスを奪われ、あなたは新たな知識を得るチャンスを失ってしまっています。

もちろん、最後まで「あ、それやっぱり知っている」となる場合もありますが、お客様の話を聞いてあげて損をすることはありません。

ガイドで肝心なのは「お客様を喜ばせること」であり「あなたが満足すること」ではありません。

なのでぜひ、「ボーリング型+要約」でコミュニケーションを取るようにしてください。