ガイドをするにあたって気を付けるべきこと

昨日で大きなツアーが終了し、残すは数回のデイガイドのみとなりました。

高野・熊野特区通訳案内士の試験も間近に控え、また、それに向けての現場研修も今月より始まります。

そこで、本日より、数回に分けてガイドとしての心得および試験対策などについてお話しようと思います。

1.すべては経験から

2014年に高野・熊野特区通訳案内士の資格を取得し、その年の11月9日にガイドとしてデビューし、現在までおよそ延べ300組以上をご案内させていただきましたが、机上の勉強だけではガイドとしての成長は絶対にありませんでした。これははっきり言えることです。

私ははっきりいって英語のスキルも高くはありませんので、うまく言えなかった表現を帰ってから復習し、次のガイドの時までに言えるようにしたり、答えられなかった質問を調べて次につなげたり、それら以外でさまざまな失敗やうれしい経験を積んできたからこそ、今の自分があります。

私は良くも悪くも、私は前の代表から背中を押されて(いや、蹴っ飛ばされて?)未熟なままガイドに出されました。

万人にこの方法がいいかというとそうではないと思いますが、結果として私にはこれが良かったのでしょう。

回数を重ねるうちに、ガイドに出ることにためらいがなくなり、自信も湧いてきました。

始めた当時は、前日はロクに眠れず、頭が痛くなるほど緊張していましたが。

ただ、この方法は手荒で、成長までに時間がかかりすぎます。

そして未熟さゆえにたくさんの失敗を重ねてきました。

そのたびに前代表からお咎めを受ける始末・・・

しかし、これがよくも重大な事故につながらなかったものだと、今でも不思議なくらいです。

 

今では、私の経験を元に新人さんにはアドバイスができますので、背中を蹴っ飛ばしたり、泳げないのにプールに放り込んだりという手荒なことはしませんのでご安心を。

きちんと泳ぎ方を教えて泳がせた方が、成長が格段に早いのは当然のことですから。

 

高野・熊野特区通訳案内士の資格や、通訳案内士の資格をお持ちの方の中には、いまだに研修だけに参加したり、ボランティアで案内されたりしている方もいるようです。

もったいない話です。

 

そんな方は、ガイドを始めるための明確な基準は持っておらず、ただ漠然とされている方が多いように思います。

 

私の場合は「蹴っ飛ばされた」ので、当日まで必死でした。

忘れもしない、ガイド人生最初のコースは「発心門王子~本宮大社」でしたが、「現場での練習を5回はする」と決めて現場に行き、うまく説明できなかった部分については家で覚えなおし、次の練習では言えるようにする・・・といった工程を踏んでデビューに至りました。

今想えば、よくもあんなガイドでお金がもらえたものだという程のお粗末な内容でしたが、とにかく一度経験することで、自身にとって大きな一歩となったことは間違いありません。

 

漠然とされている方は、この方法の逆をたどって「このコースを10回練習したらガイドに出る」などと決めてデビューされるのもひとつの方法かと思います。

それを繰り返し、案内できるコースを増やしていけばいいと思います。

「いや、私はまだまだ・・・」なんて言っていたら、いつまでたってもガイドに出ることはできませんよ。

 

2.最優先事項はお客様の安全

ガイドをするにあたり、最優先すべき事項は当然のことながらお客様の安全です。

これをないがしろにする方はいないと思いますが、そこには盲点があるので敢えて記載しました。

こと熊野古道においては歩くたびにコースの状況が変化します。

アスファルト道になったり、上り坂・下り坂、コース上に根が出ていたり、石が転がっていたり、狭くなったり・・・

一番危険なのは下りの石畳です。

特に雨の日や雨上がりには間違いなく滑りやすくなっています。

昔の人はわら草履をはいていたので、雨の日でもそう滑ることはなったでしょうが、トレッキングシューズでは個体差はあれ確実にわら草履よりも滑ります。

以前お客様を案内していた際に、話が盛り上がり、下りの石畳で注意喚起を忘れて下っていました。

石畳も中間あたりに差し掛かったとき、それは起きました。

お客様が滑って肘を強打したのです。

幸い大事には至りませんでしたが、万一骨折でもすれば大問題になっていたでしょう。

特に訴訟が大好きなお国柄のお客様には、特に注意が必要です。

それ以来、石畳や急な下り坂に差し掛かった際には必ず話の途中でも注意喚起をし、下っている間はあえて話をしないで足元に集中してもらうようにしています。

 

あと、やはり自然の中を歩くわけですから、マムシ・ヤマカガシなどの毒蛇や、オオスズメバチ・キイロスズメバチといったアグレッシブなハチがいますので注意が必要です。

以前ある地点に差し掛かったときに、草むらに逃げていくマムシを発見しました。

この場合は、マムシはすでに古道沿いに設置している手すりの向こうにいてお客様との接触の可能性がないことと、頭が古道方向に向いておらず、再び古道には出てこないことが確実だったので、敢えてお客様にはお知らせしませんでした。

これは、お客様にむやみに恐怖心を与えないためです。

お客様の中には、無毒のシマヘビを見ただけで悲鳴を上げるほど怖がる方がいらっしゃいます。もちろんお客様にはそれが毒蛇かどうかなんてわかりませんから怖がるのは当然ですが、生理的に受け付けない方もいらっしゃいます。

それを、わざわざ逃げている最中の蛇を見つけて「毒蛇だから気をつけて」というのは、「注意喚起」どころか単に恐怖心をあおるだけです。

お客様の気持ちも考えて状況に応じて判断することが問われます。

 

ちなみに、私は子供の頃、マムシに咬まれたことがありますが、今もこうして元気に生きています。

 

あと、お客様は道に迷わないか不安があるためにガイドを雇います。

「ここからだとあと何キロで何分」と、コース情報を正確にさらっと言えることは信頼にもつながります。

また、特に熊野古道においては、自分の案内したことのない道は歩かないことです。

「当たり前じゃないか」という声が聞こえてきそうですが、私が言っているのは古道から迂回して別ルートを取る場合です。

以前こんな経験がありました。

雨が降ると川ができ、それが古道を横切っている箇所があります(あなたがエキスパートならそれがどこかわかるはずです)

普段は水流がないので問題なく渡ることができますが、その日は前日の大雨で渡ることが難しく、お客様も「靴を濡らしたくない」とおっしゃったので、迂回路を通ることにしました。

しかし、当時かけだしの私は、「そこを通れば行ける」とは聞いたことはありましたが、実際に通ったことはありませんでした。

お客様には「こっちを歩きましょう」と提案しましたが、不安で不安で仕方ありません。お客様からは「あとどれくらいで古道に入れる?」などと質問を受けますが、もちろん的確に答えることができません。ついに自信がなくなり、結局は舗装された林道(こちらは知っていた)を通って迂回しました。お客様には平謝り。

そういった箇所は、あらかじめ迂回路を実際に歩いて確認することです。

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