捕鯨について②

捕鯨方法

太地における「網掛け突き取り法」についてご紹介いたします。

準備

夜が明けると、水夫は船を下ろし刃刺が来るのを待ちます。
一方、鯨山見(クジラを陸上から探す場所や人のこと)に務める人たちは、夜明前から山見場に向かい、夜が明けると望遠鏡を手にクジラの潮吹きを探します。

やがて宰領(さいりょう・指揮監督する人)が到着し、山見の陣容が整うと、港の船には刃刺が陣取り、出港の合図を待ちます。

その後、1番船の刃刺から出港の合図が出されると、船は一斉に沖に向かって漕ぎ出します。
船が沖に到着すると、1番刃刺の指揮で、いつクジラ発見の合図があっても行動できる体制を整えるため、扇形に陣取ります。

山見(梶取崎)からクジラ発見の狼煙が上がると、続いてクジラの背後に回るように指示を出し、網船の刃刺は網を張る場所を指示し、クジラがいつ来ても対応出来る用意をします。

クジラ発見から捕獲まで

燈明崎の采配台では、太地角右衛門が采配棒をかざして沖の船に指示を与えます。
それを見た勢子船は、船縁を叩いてクジラを追い立てていきます。

クジラが網に絡まると、角右衛門は1番刃刺に銛を打つことを指示します。
1番刃刺は「南無阿弥陀仏」と唱えた後にクジラめがけて銛を打ち、それを合図に各勢子船からも勢いよく銛を投げていきます。

何本も銛が刺さったクジラは次第に弱っていきます。

燈明崎の狼煙場からは、港に向けて陸上作業の段取りを指示する狼煙が上がり、解体場の準備が進められていきます。

クジラは手投げ銛だけでは絶命させることはできません。

最後のトドメを刺すのは、刃刺の子で、将来の刃刺を目指す見習いの水夫です。
じっとクジラの動向を見つめていた4番刃刺が、自分の鼻を指して「鼻!」と叫ぶと、見習いたちは一斉にクジラめがけて飛び込みます。
この、トドメを刺すことを「鼻切り」と言います。

鼻切りの役目は一世一代の晴れ舞台だったそうです。

断末魔のクジラに誰よりも早くしがみついた者だけにトドメを刺す資格が与えられました。
なぜか?
それは、暴れるクジラに大勢が刃物を持って向かえば、必ず誰かが死に及ぶ大けがをすることになるからです。

トドメの資格を得た者は、クジラが海中に潜れば一緒に海中に引き込まれ、どんなことがあっても絶対に手を離さないでしがみつきます。
暴れるクジラから離れることは、死を覚悟することでもあったからです。

頃合いを見計らって、一気にクジラの鼻を切りトドメを刺し、皮を切って確保のためのロープを通します。

仕留めたクジラは2艘の持左右船(もっそうぶね)の間に縛り付け、港まで曳航します。
クジラを縛る際、上だけにロープを通しても沈んでしまうので、見習いはクジラの下に潜り、持左右船の両端にロープを渡して縛ります。
この際に万一クジラが暴れでもすれば、命を落としかねない、大変危険な作業です。

1番船の刃刺は、御注進旗を立てて山見から帰って館で待つ宰領の所へ向かい、漁の様子やトドメの役割を果たした若者とその親の名誉を報告します。
その親子は、宰領より褒美をつかわされました。

このように、山見、勢子船、網船、持左右船とそれぞれ役割を分担し、それぞれが巧みに連携を取りながらクジラを捕獲していました。
捕獲が無事に終われば、今度は岸で待つ人々の仕事が待っています。



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