「熊野」の由来について考える①

今日は熊野の由来について、定説とされているものと、ホツマツタヱに書かれていることを比較しながら検証したいと思います。

五来重氏の著書・熊野詣 三山信仰と文化 には、熊野は幽国(かくれくに)であり、古代人は死者の霊のこもる国がこの地上のどこかにあると考えたことから、これを「こもりくに(隠国)」と呼んだ。
また、冥界を意味する「くまで」「くまじ」と同じ「くまりの」の変化であろうと記しています。

高野澄氏の著書・熊野三山・七つの謎―日本人の死生観の源流を探るには、

◯神が隠れ籠るところを「神奈備(かんなび)のミムロ(御室)」と表記することがあり、牟婁郡の「牟婁」に由来している。

◯紀伊続風土記を引用して、「熊は隈であり、籠るという意味。この地は山川幽谷(さんせんゆうこく)、樹木鬱蒼だから熊野と名付けた」

◯熊野と御室はどちらも「隠れ、籠る」という意味

としています。

さらに、「熊(隈)には「死者の籠るところ」の意味もあり、日本書紀の中でオオアナムチノカミ(大己貴命)が天孫(ニニギノミコト)に国を献上したあと「八十隈(やそくまで)に隠去(かくれ)なむ」といって死んでいく場面があり、「八十」は強調の字で、「隈」は「幽界」とか「死者の魂の籠るところ」の意味であることは言うまでもない、万葉集ではこのような性格の場所を「隠国(こもりく)」と呼んでいる。

としています。

豊島修氏の著書・死の国・熊野―日本人の聖地信仰には、五来重氏の説を有力としながら、次の説が紹介されています。

熊野の「熊」は「隈」であり、「奥まった場所」という意味であり、古代の中心地域であった大和・河内から見て、遠く隔たった辺境の地域、あるいは、海の彼方にある常世国から見て奥である・・・というものですが、豊島氏はこれには無理があるようだとしています。

そしてやはり「熊野とは隠野(こもりの)=隠国(こもりく)」であり、死者の霊や神が隠れ籠る場所であると結論づけています。

一方、ホツマツタヱではどうでしょうか。
以前の記事にも書きましたが、ざっとおさらいをすると・・・

全国を回って国語と農業の普及に努めていた七代アマカミ、イサナギ・イサナミは、ソサの国(紀伊半島南端部の地域)で、男子を授かります。

その子は、ソサの国で生まれたことから「ソサノヲ」と名付けられます。
ソサノヲは幼少から暴れん坊であり、ソサノヲを産んだイサナミは、自分の隈(クマ=けがれ)がソサノヲに移ってしまったと思い、その「隈」を落とすため「クマノ宮」を建て、その償いを始めます。

ところが、ソサノヲは育ち始めた稲の上からさらに種を撒いて、稲の成長を阻害する行為を働いたため、その年の米の収穫が難しくなりました。
そこで、平野のすくなかったソサの国で、平地では用水路を整備し、養蚕を始めようと山焼きを始めますが、その折に運悪く風向きが変わり、イサナミは火傷を負って亡くなってしまいます。

イサナミの亡骸は、有馬の花の窟神社に埋葬されます。

ホツマツタヱ解読ガイドによると、「隈」とは「曲・隈・阿」であり、
1.離れ。それ。反り。曲り。背き。
2.負の方向に離れるさま。「下がる・勢いを失う・劣る・縮小する・静まる・隅にある・果てる」さま
●枯。暗。病。雲。汚穢。闇。厄。
●隅。末。下。果て。

とあります。
ホツマツタヱのクマノ宮については、

ソサ国に生む
ソサノヲは 常に雄たけび
泣きいさち 国民くじく
イサナミは 世のクマなすも
わが汚えと 民の汚えくま
身に受けて 守らんための
クマノ宮

ここで登場する「クマ」は「汚穢(おえ)」でありケガレを表し、「汚え」と「くま」は同義語で、同じ意味の語を連ねています。おそらく強調でしょう。
そして、意味としては前述の2の「枯。暗。病。雲。汚穢。闇。厄」として解釈されています。

いずれにしても、ここで登場する「クマ」とはケガレのことです。

いったんここで話をまとめます。

熊野の由来について、通説として
◯死者の霊が籠る国を「こもりくに(隠国)」といい、冥界を意味する「くまで」「くまじ」と同じく「くまりの」の変化
◯「クマ」とは「隈」であり、「籠る」という意味であり、この地は樹木鬱蒼なので「くまの」と名付けられた、あるいは、死者と神が隠れ籠る地
◯神が隠れるところを「神奈備のミムロ」といい、「クマノ」も「ミムロ」も「隠れ、籠る」という意味
◯熊野の「熊」は「隈」であり、「奥まった場所」という意味であり、古代の中心地域であった大和・河内から見て、遠く隔たった辺境の地域、あるいは、海の彼方にある常世国から見て奥である

なので、クマ=隈=籠る→死者と神が隠れ籠る国という解釈、あるいは、中心地から離れた奥まった場所と考えることができます。

一方、ホツマツタヱでは、わが子ソサノヲの傍若無人ぶりは、自分の穢(=クマ)が原因とし、その穢を落とすために建てたヤシロが「クマノ宮」
その後イサナミは、火傷を負って亡くなる。

長くなりそうなので、一旦ここで終わります。

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