日本語と英語を比較する③

今回も「日本語と英語を比較する」です。
今回は音声面です。

発音する文字、しない文字

日本語には「五十音」があり、一文字ずつ発音するのに対し、英語などのヨーロッパの言語の多くでは、語の中で発音しない文字が存在します。

例えば、「hour」の「h」や、「high」「thought」の「gh」、「intervene」「wipe」「donate」の最後の「e」もそうですし、「foreign」は「e」と「g」、「friend」の「i」、「country」の「u」、「Wednesday」の「d」、「n」のあとの「e」は発音しません。

これが、一音ごとに発音する日本語話者を苦しめている原因のひとつなのだと思います。

これらの語の日本語の意味を、ローマ字に直すとこうなります。

「jikan」「takai」「omotta」「kainyuusuru」「fuku」「kifusuru」「gaikokuno」「tomodati」「kuni」「suiyoubi」

※「ti」は「chi」と書きますが、音声学的にわかりやすく「ti」にしています。

ローマ字に直すとよくわかるように、発音しない文字は存在しません。

この、発音しない文字があるという発想が日本語話者には理解に苦しむところのようで、多くの学習者(特に中学から英語を学び始めた学生)は、一語一語きっちりと発音するクセがなかなか抜けないようです。

I was so tied that I couldn’t meet you yesterday.

ネイティブのように発音するとして、あえてカタカナに直すとこうなります。

アワズ ソー タイアッ(ド) ダライ クドゥン ミーチュー イエスタデイ。

これを、一語ずつ発音すると

アイ ワズ ソー タイアッド ザット アイ クドゥント ミート ユー イエスタデイ。

一音ずつ発音する習慣がある日本人の多くは、このように一音ずつの発音に引きずられて一語ずつでさえもこのように発音してしまいます。
文字に起こすと分かるように、一語ずつ発音すると非常に長くなりますし、英語らしい発音は姿を消してしまいます。

上記の例文の場合、以下のようにある特定の語尾を省略することでかなり英語らしく聞こえるようになります。

ア(イ) ワズ ソー タイアッ(ド) ザ(ット) アイ クドゥン(ト) ミー(ト) ユー イエスタデイ。

リンキング(リエゾン)

上記の例文中、「ザ(ット) アイ」と「ミート ユー」→「ミーチュー」はリンキングと言われる現象で、2語をひとかたまりとして発音する方法です。

英語にはこのリンキングが多数発生します。

リンキングには法則性がありますので、それを理解した上でよく出るリンキングについては覚えてしまうほうが早いです。

日本語にも「天皇」=「ten」「ou」を「tennou」としたり、「観音」=「kan」「on」を「kannon」としたりするのでリンキングは発生していますが、これらは元を正せば漢語由来であり、大和言葉にはないように思います。

リダクション

上記例文でクドゥン(ト)はリダクションです。
一応脱落するとは言っても、軽くポーズを置きますので、完全に脱落するわけではありませんが、音としては消滅しています。

日本語でも「手術」などはアナウンサーで無い限り、日常会話で「shujutsu」と発音することは少なく、「shuutsu」と発音することがほとんどです。

これは、「連続する子音は発音しにくい」からです。
日本語にもリダクションが無いわけではありませんが、やはり漢語由来の語に限られるようです。

ちまたにあふれる英語塾では、この発音方法をあまり力を入れて教えていないように思います。
文法も大切ですが、こちらがおざなりになると、「わたしの英語が通用しない」「ネイティブの言っていることが聞き取れない」という現象が起こります。

学校の教師でもネイティブの言っていることが聞き取れない人がたくさんいるようです。
これは由々しき問題ですね。

日本語と英語を比較する②

今回は前回に続き、「日本語と英語を比較する」についてお話します。

完了形

日本人が苦手としている文型に、完了形があります。

現在、過去、未来に完了形があり、どれも日本語にはない概念なので、理解するまで時間を要します。

また、完了形には完了と経験があり、さらに学習者を悩ませます。

外国人のお客様からの質問でよく耳にするのが

How long have you been a guide?

と、これも完了形を使って聞いてくることがほとんどです。

答えとしては、別に「Five years」でもいいのですが、それでは味がありませんので、

I will have been a guide for 6 years in November this year.

などと、未来完了を使って答えるようにしています。

SOVとSVO

日本語の語順はSOVで文末に動詞を持ってくる「文末決定型」、英語はSVOで、主語の次に動詞、目的語が来る形を取りますね。
文末決定型は別に珍しい現象ではなく、約45%が文末決定型という調査結果もあるくらいです。

お客様とよく日本語の特徴についてお話をしますが、「文末決定型」だということをお話すると、英語圏のお客様は「ドイツ語みたいだ」という答えが返ってきます。

しかし、ドイツ語は100%文末決定ではなく、

Ich bin ein mann.

となり、英語の語順でいうところの

I am a man.

であり、ドイツ語でのBe動詞にあたる「ein」は主語の後に来ますので、日本語のような形ではありません。
ただし、これが完了形になると英語にあたる「have」と過去分詞にあたる語が分離をし、haveと過去分詞の間に目的語を挟んで過去分詞が文末に来るそうです。

Ich habe ihn getroffen. (わたしは彼に会いました)

「habe」が「have」、「getroffen」が過去分詞です。

これがおそらく、多くのお客様が「ドイツ語みたいだ」という所以なのでしょうね。

ちなみに、ドイツ語では数字の数え方に特徴があり、

「五十三」なら「3と50」、「百二十三」なら「100、3と20」という言い方をするそうです。

「難しい数え方をしますね」というと、「フランス語の方がもっと複雑だ」とおっしゃるお客様もいました。

オノマトペ

日本語はオノマトペ(擬音語、擬声語、擬態語)が、英語はおろか、他の言語より圧倒的に多いということで、外国人の日本語学習者を悩ませているようです。

オノマトペは日本人の感性でないと理解ができないので、なぜそんな音になるのか理解に苦しむようです。

「川がサラサラ流れる」なんて、まず理解できないですし、「しーん」と、静寂を表すのになぜ音で表すのか、など、日本人でも理由がよく分からない語が多いようです。

また、同じ「ゴロゴロ」でも「ゴロゴロしていないでさっさと用事を済ませなさい」とか「お腹がゴロゴロする」とか「巨大な岩がゴロゴロ転がってきた」とか「そんなやつ、ここにはゴロゴロいるよ」など、文脈によってまったく違う意味になる語もあるので、かなり厄介ですね。

日本語と英語を比較する

今回は「日本語と英語を比較する」についてお話をします。

接続詞

もし明日晴れたら、海に行くぞ。

英訳は

I will go to the sea if it is sunny tomorrow.

ですよね。

しかし、

If it is sunny tomorrow, I will go to the sea.

でも使えます。

かたや日本語はどうでしょう?

海に行くぞ、もし明日晴れたら。

とは絶対に言いませんよね。

普通、英語は語順が狂えば意味をなさなくなり、日本語は語順が多少入れ替わっても意味が通るという認識です。

◯ 明日もし晴れたら、海に行くぞ。

✕ If tomorrow it is sunny, I will go to the sea.

とはなりません。

通常、日本語は語順の定義に揺れがあり、ある程度語順に変化があっても意味が通ることが多いですが、主節と従属節の関係は、従属節→主節の順番という決まりがあり、これが逆転すると意味をなさなくなります。

一方、英語では、 If 、when、as、after などの接続詞は、主節と従属節が入れ替わっても問題なく意味が通ります。

◯ When he got to the station, the train has already left.
◯ The train has already left when he got to the station.

◯ 彼が駅に到着した時、電車はすでに出発していた。
✕ 電車はすでに出発していた、彼が駅に到着した時。

◯ It began to rain after he washed his car.
◯ After he washed his car, it began to rain.

◯ 彼が車を洗ったあと、雨が降り始めた。
✕ 雨が降り始めた、彼が車を洗ったあと。

結構文法がゆるい日本語ですが、変な所?でカッチリとしているところが面白いです。

単純未来の Will

次に単純未来の Will です。

私は来月17歳になります。

英語では

◯ I will be seventeen years old next month.

です。

しかし、大抵の英語話者が日本語に訳すと、

私は来月17歳になるでしょう。

としてしまうそうです。

ここで英語話者の「母語の干渉」が頭をもたげてきます。
この場合、万一のことがない限り来月17歳になることが確実(自然の成り行きでそうなる)なので、日本語では「~になるでしょう」という言い方はしません。

天気予報では、「~でしょう」と未来形で言います。
しかし、日常会話の中で、「明日確実に雨が降る」と言いたい時はどう言うでしょうか?












明日雨が降るよ。(それでも行くの?)

と、現在形で話しますよね。

明日雨が降るでしょう。

とはなりません。

日本語では、確実に事が起こることを前提に話す場合には「でしょう」という言い方をしませんが、英語では will をつけて話すという違いに戸惑う英語話者が多いそうです。

ご参考にされてください。


日本語の知識②

今回は、日本語の知識の第2段です。

名詞の特徴

日本語の名詞には、以下のような特徴があります。

  • 単複同形
  • 性別がない
  • 語形が変わらない

私たちは普通に使っていますが、欧米の言語から見ると、いや、世界を見ても、名詞にこのような特徴を持った言語というのは日本語くらいだそうです。

では、他の言語はどうでしょうか?
ヨーロッパの言語の多くは、源流がラテン語なので構造が良く似ています。
スペイン語、イタリア語、ドイツ語、フランス語などは名詞に男女・単数と複数があります。

語形の変化については、例えばロシア語の辞書には、日本語でいうところの「手紙を」「手紙が」という形で載っているのだそうです。
つまり、「手紙を」で「1語」という理解なのだとか。
なので、日本の辞書に記載されているように「手紙」という語が単体で意味を成すという現象が信じられないらしいです。

ちなみに、英語は基本的に単数形と複数形がありますが、性別はありませんよね。
というか、「昔はあったがなくなった」といったほうが正しいですね。

ただし、ご存知のように、例外的に単複同形の語もあります。

carp, sheep, deer などがそうです。

ネットなどを調べていると、fish も単複同形と説明をしているところがありますが、私がネイティブのイギリス人に確認をしたところ「fishes」も使うと言っていたので、これは違うと思います。

逆に、日本の名詞には欧米の言語のような概念がないので、日本人にとっては欧米の言語の習得が難しいと言えます。

数量詞の不思議

また、名詞には数量詞が含まれています。
この数量詞の扱いが色々と化けるため、外国人には厄介だそうです。

中でも、名詞と助詞の間に数詞が入る現象が特に難解のようです。

例えば、私たちは「手紙2通を」という言い方を普通にします。
なぜ、「手紙」と「を」の間に数量を表す語が入るのか、理解できないそうです。

また、「2通の手紙を」「手紙2通を」「2通手紙を」という言い方もします。
しかし、英語では「2letters」という形は変わりません。

谷山先生の言葉をお借りすれば、「日本語の数量詞は文中で暴れまくる」という現象が起こり、外国人の日本語学習者を悩ませているそうです。

以上、ご参考に。

日本語の知識①

更新が遅くなりましたが、今日は「日本語の知識」についてお話をします。

外国人を案内していると、必ずと言っていいほど日本語に対しての質問を受けます。
ですので、日本語の知識を知っておくということは、ガイドにも幅が広がるということを踏まえて読んでいただき、ガイド知識のひとつとしてストックされることをオススメします。

時制の一致

今日は「時制の一致」についてです。

The company was looking for a person who was familiar with mineral.

これ、日本語に訳すとどうなりますか?

ちょっと考えてみてください。














その会社は、鉱物に詳しい人を探していた(募集していた)。

日本人なら、こう訳しますよね?

ところが、英語圏の人は

その会社は、鉱物に詳しかった人を探していた(募集していた)。

という間違いを犯します。

これは英語(またはヨーロパの言語)に「時制の一致」があるからです。
こういった、母語の知識を応用して間違いを犯すことを「母語の干渉」と言います。

この場合、「詳しいのは」の「の」は、「形式名詞」と言い、名詞の仲間です。
「詳しい人は」の「人」に当たる品詞です。

このように日本語では、名詞を修飾する語(形容詞)が、その名詞の特徴を限定する場合(この場合は「鉱物に詳しい人」)には、時制という概念は存在しなくなります。

これは、英語話者には理解し難い現象なのだそうです。

ただし、次の例文は時制が一致します。

当時、鉱物に詳しかったのは、山本さんだけだった。

これは、過去の状況について述べています。
この場合は「詳しかったのは」が通用します。

まあ、ここまで詳しく説明する必要はないですが、「時制の一致が起こらないことがある」ということを知ってもらうだけでも、お客様は興味を持ってくれると思います。

どの言語学習でも、先生選びは大事

私たちは感覚で「おかしい」と感じ、正しい日本語に訂正できますが、それがなぜそうなるのかという説明はできません。
これが、日本語を母語とする日本人と、日本語を外国語で学ぼうとする人の違いです。

このことは、英語学習でも同じです。

なぜ、そうなるのかを知っている先生に教えてもらうということが重要であり、それを知っている先生であれば、ネイティブでなくてもかまいません。
むしろ、ネイティブでも「なぜここは『at』を使うのか」という説明ができなければ、ただの「英語が話せる人」であり、「英語を教えられる人」ではありません。

なので、重要なのは「ネイティブかどうか」よりも、「日本語話者の立場に立って教えられる人かどうか」です。

私たちは何気に使っている日本語ですが、このように少し視点を変えると、新たな発見があります。
また、他の言語の特徴を知ることで、日本語がどういった特徴を備えているのかが見えて来て、言語の学習がさらに面白くなりますよ。

日本語教育の知識・日本語の魅力講座、終わりました。

日本語教育の知識・日本語の魅力講座が無事に終了しました。
初めての講座開催でわたし自身が慣れていないということもあり、結構バタバタしましたが、何とか成功のうちに終えることができたと思います。

参加された方々は、日本語を違う視点から見ることによって、新しい発見があったことかと思います。

個人的には、「教育の知識をたくさん身に着けてから現場に出る」より「行きあたりばったりでいいから、受講生から質問を受けることによってスキルが磨かれる」という先生の言葉に共感しました。
このことは、ガイドをするにあたってまったく同じことが言えるからです。

お客様からの質問が、自分のスキルを上げてくれます。
正直、はじめはどんな質問が飛んで来るか、怖いです。
しかし、質問を繰り返し受けることにより、よりお客様が納得する答え方ができるようになってきます。
また、外国人目線で物事を見ることにより、来るであろう質問が予想できたりします。

「とにかく現場に出ること」
「外から物事を見ること」

その重要性を改めて感じた瞬間でした。

今日の課題の中からひとつだけ。

課題2 以下の語彙を3つのグループに分けてください。

1.消印 2.生ビール 3.コロッケ定食 4.蛇口 5.抹茶アイス 6.天ぷらそば

正解は①1と4、②2と6、③3と5です。

1は和語+漢語、4は漢語+和語
2は和語+外来語、6は外来語+和語
3は外来語+漢語、5は漢語+外来語

というくくりです。

日本語は和語(やまと言葉)、漢語、外来語、混種語に分けることができます。
上記の単語は、「2ヶ国語」を組み合わせた「混種語」というくくりになります。

普段何気なく使っている日本語ですが、こうして違う視点から言葉を眺めてみると、あらたな発見があります。

参加されたみなさん、お疲れ様でした。

日本語教育活動、いよいよ始まります。

以前からずっと思っていた、日本語教育活動が明日からいよいよ始まります。

この講座の目的は2つあります。

ひとつは、日本語教育に対する知識を学んでいただくこと、もうひとつは、日本語の魅力について知っていただき、日本語に対する誇りを持っていただくことです。

一つ目の理由ですが、日本に住んでいる外国人が日本語で満足な意思疎通ができていないために望み通りの職に就けていないという現状を知り、また、日本語を教えることができる要員が足りていないという現状も知り、何とかしてこのギャップを埋めていきたいと思っていたからです。

ただ、そうするには具体的にどうしていいか分からず、ただ漠然と思っているだけでした。

3年ほど前から田辺市が主催する日本語教育の講座に参加をしていました。
これを機に、少しの間でしたがボランティアで日本語を教えていました。
しかし、いざ教えるとなると、その難しさを実感させられることになり、「まずは日本語をきちんと教えられるようにならないといけない」と殊更思うようになります。

「日本語が話せる=日本語を教えられる」ではないのです。

今年、その田辺市主催の日本語教育講座の講師・谷山先生とお話をする機会があり、そこから話が一気に前に進み始めました。

自分ひとりで3年間、悶々としていたことが、今年に入って突然遠くに光が見えてきた、そんな感じです。

これも田辺市と谷山先生のご厚意のおかげです。

まだまだどんな形にしていくのかはこれからの状況次第で変化はしていくと思いますが、とりあえずは、大きな一歩を踏み出せたと思っています。

よく、日本在住の英語話者が日本人に向かって英語で話している姿を見かけます。
日本人は律儀な性格もあってか、英語で一生懸命返そうとしますが、なかなかうまくいきません。

しかし、よく考えてみてください。

ここ日本で、それも日本に住んでいる外国人が、「日本人は英語を理解できない」と漏らしている姿って、おかしくないですか?

例えば、私たちがアメリカに住み始めて「日本語が通じない」と文句を言いますか?

その国に行けば、その国の言語でコミュニケーションをとることは当然のことです。
特に英語話者は、このことを随分と勘違いしているようです。

母語に誇りを持っているフランスでは、英語を使っての広告は法律で禁止されています。
レストランで英語で話そうものなら「プイッ」とそっぽを向かれたと聞いたこともあります。

わたしがスペインに行った時も、特に地方では英語が通じず、早口のスペイン語でまくしたてられたという経験もあります。

「英語が世界共通言語だ」と思っていると、足元を掬われます。

みんな母語に誇りを持っているのです。

悲しいかな、「横文字」を多用したがる日本人にはその意識が乏しいように思います。

今回の講座は、そんな日本語の魅力を少しでも知ってもらいたいという思いも込められています。

9月からの講義は有料になりますが、興味が湧いた方はぜひ、参加してください。
Zoomでのオンライン講義も検討中です。
9月からの講義については、追ってお知らせをいたします。