多様な文化的背景の違いを理解する⑪

コミュニケーションのポイント

今日はコミュニケーションのポイントについてお話しようと思います。
以下に挙げる注意点は、外国人だけではなく、日本人にも言えることです。
結局相手は人間なのですから、基本的なことは万国共通です。

挨拶の方法は相手に合わせる

近年、日本式の挨拶(お辞儀)をする人が増えています。
こういったお客様は、少し日本のことを勉強している可能性があります。
そういったお客様の「努力」を無駄にしないよう、「外国人は握手だ」と決めつけて相手がお辞儀をしているのに握手をしに行かないことです。

絵・写真・グラフなどを効果的に使う

これは過去の記事でも結構取り上げていますので、ご存知の方もいると思います。
あなたは、「毛がふさふさしていて茶色で、足と目の周りが黒く、耳が立っていて足が短い動物です」と聞いて何を想像しますか?
お客様の頭の中には、5人いれば全員違った物を想像しているはずです。
この「想像のギャップ」を埋めるのに写真が活躍します。

言葉で伝えるには限界がありますが、たぬきの写真を見せれば一発です。

また、年代別の推移などを見せる場合も、グラフがあればより理解度が増します。

樺沢紫苑さんの著書「アウトプット大全」によると、人は言葉だけで説明を聞くよりも、写真や絵を見ながら聞いた方が記憶の定着度が増すそうです。

写真やグラフは積極的に使いましょう。
私はファイルにそれらを入れています。
今どきであればタブレットを使う方法もありますが、高価な上に落としたりバスに忘れたりすれば「作り直し」が大変です。
ファイルであれば万一なくしても作り直しは比較的簡単でもあり、何より安価です。

また、ファイルに時刻表なども一緒に入れておき、インデックスをつけていればバスの時間を瞬時に開くことができます。
タブレットでもファイル管理はできますが、やはりパフォーマンスは落ちます。

時間がないのでまた明日です。

多様な文化的背景の違いを理解する⑩

今日は「リスクと注意点」の続きからです。

写真撮影と時間管理

日本人を含めアジア系のお客様は写真撮影が本当に好きな人が多いです。
以前の記事にも書きましたので詳細は割愛させていただきますが、それが原因で行程に大きな影響を及ぼす場合が出てくる時があります。

バス・電車の時間、日没時間が迫ってくる場合などは、お客様には「ここからは写真はダメ」とお伝えすることも必要になってきます。
お客様は古道の中で暗くなってしまうことを分かっていません。
以前の記事については、こちらをご参照ください。

https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2021/01/14/%e5%a4%9a%e6%a7%98%e3%81%aa%e6%96%87%e5%8c%96%e7%9a%84%e8%83%8c%e6%99%af%e3%81%ae%e9%81%95%e3%81%84%e3%82%92%e7%90%86%e8%a7%a3%e3%81%99%e3%82%8b%e2%91%a4/

一番状況をよく知っているガイドが、一番正しい判断が出来ることは当然です。
なので「このままではマズい」と思ったなら、例えお客様がその時楽しんでおられようと、理由をきちんと説明して先を急ぎます。

気候への順応性

欧米系のお客様、特にヨーロッパやカナダのお客様は寒さに強い方が多いです。
これは、欧米人は基礎体温が高いためです。
以前、3月のまだ肌寒い時に、小雲取越をお客様と歩いている時、Tシャツ・短パンのイギリス人に会ったことがありますし、3月に大雲取越をご案内している時も、カナダのお客様は途中まで上はTシャツ一枚で歩いていました。

「ちょっと寒くなってきたから、上を着るよ」と言って立ち止まり、バックパックから出してきたのはTシャツ(笑)
「寒くないですか???」と聞いたら、「これはウールだから温かいんだよ」と言っていました。
ちょっと私たちの感覚とは違うようです。

こういったお客様は、逆に暑さには非常に弱いです。
特に日本の湿気を含んだ暑さには慣れていないので大量に汗をかき、みるみる肌が紅潮してきます。
梅雨から夏にかけて歩く場合は注意が必要です。
「喉が乾いた」という感覚があればすでに軽い熱中症が始まっていますので、そうなる前からこまめな水分補給と多めの休憩で対策をします。

また、スプレーボトルを持っておき、腕にかけてあげると、その気化熱で体温が下がりますし、うちわを用意しておいて休憩時に仰いであげるだけでも随分と違います。
ちなみに私がうちわを持っていく時は、釣り用のピンオンリールに繋いでバックパックにつけておきます。
うちわを使う時だけピンオンリールの紐が伸び、使い終わって手を離せば勝手に縮むので便利ですよ。

水分ですが、水だけでは逆に脱水症状になり危険ですので、できればスポーツドリンクと併用して飲んでもらうようにします。

ただし、スポーツドリンクは糖分が多すぎるので、水で2倍程度に薄めたものが発汗時の水分補給には最適です。
それが面倒であれば、スポーツドリンクの原液を飲んだあとに水を飲むと「約2倍」になります。

あと、トイレに行かないようにするためにあえて飲まない人がいますが、これは非常に危険です。
幸い、熊野古道では他の自然公園のようにトイレに「雉撃ち・お花摘み」に厳しくありませんので、「したくなったら言ってください」と言って飲んでもらうようにします。

逆に南国系に方などは寒さに弱いです。
フィリピン、シンガポール、香港、オーストラリアの一部などのお客様はその傾向が強いです。
ただし、寒さ対策は服装さえ気をつけてもらっていれば対処できます。
熊野は極寒の地ではありませんので、さほど気にする必要はありませんが、念の為にカイロを持っていき、必要に応じてお渡ししています。
また、人数が少なければお湯を持っていき、休憩時にコーヒーを入れてあげると喜んでくれます。
・・・中にはコーヒーにうるさい人がいて「これ、インスタントだね」と言った人がいましたが。
どこにでもいるんです、嫌味な人が。
だいたい、本当に寒い時はインスタントであっても結構喜んでくれますがね。

多様な文化的背景の違いを理解する⑨

リスクと注意点①

募集型と着地型、客層の違い

旅行は大きく分けて募集型と着地型に別れます。
募集型とは、決まった行程に対して文字通り募集をかけ、不特定多数(もちろん定員はあります)が参加するツアーです。
着地型とはいわゆるオーダーメイドツアーで、依頼者の要望を聞きながら行程を作成していきます。
この場合は少人数で、例えば家族であったり、会社の仲間だったり、友達同士という場合が多いです。

問題なのはこの2つの旅行に参加する客層が違うということです。

募集型は見ず知らずの人が参加するため、参加者同士の信頼関係や友情などはもちろんありません。
集まってくる人の要望も様々であり、「私」が第一の外国人が集まってしまうとどのようなことになるか、ある程度想像できるかと思います。
毎回そういうわけではありませんが、意見が対立したり、ガイドの言うことを聞かなかったりする傾向が強いです。
この「エゴ集団」をまとめることは、なかなか至難の業です。

一方、着地型はというと、参加者はすでにお互い知ったもの同士であるため、信頼関係や友情は出来上がっています。
なので、例えば、誰かが遅れてしまっている時などは、自主的にその人を待ってくれることが多かったりします。
また、信頼関係が出来上がっているので意見もある程度の妥協を見せ、まとまりやすい傾向にあります。

たまにガイドの方から聞く話でクレームが多いのは前者、募集型のツアーです。
募集型は参加人数を多めに取るため、ただでさえ「私」が強い人間が大人数集まれば全員の要望に沿うことなどできません。
そんな人からクレームがあがってくるようです。
私が思うに、外国人にはこの募集型ツアーは向いていないと思います。

訴訟問題

幸い、私も私の団体のメンバーにもこういった経験はありませんが、訴訟に対する心構えも必要です。
特にアメリカなどでは訴訟を起こすことが日常茶飯事とされていますので注意が必要です。
当法人では、ツアー前に誓約書にサインをしてもらいます。

訴訟に発展するかどうかは、危険と想定されるところできちんとガイドが注意を促していたかどうかによると思います。
例えば、石畳の下り坂の前に一旦止まって、全員が集まってから注意を促すくらいのことはやっておいたほうがいいです。
歩きながら「Be careful」と言うだけではきちんと伝わっていない可能性があります。
「滑るので注意が必要」「石の縁に足をかけて下りる」「サイドに石畳がない所はそこを歩く」などを付け加えておけば申し分ないでしょう。
あとは横断歩道を渡る時とか、木の根がたくさんあるところではつまずかないようにとか。
また、木の根やグレーチングは雨が降れば滑るのでそういったところにも注意が必要です。

普段からこういったところに常に意識を置くことで大難を小難に、小難を無難に変えることができるようになると思います。
下見をされるときなどはそういったところにも注意されることをお勧めします。

多様な文化的背景の違いを理解する⑧

国ごとのニーズの違い

次に国ごとのニーズの違いについてです。
まずは全国共通なことについてです。

コーヒーは必須

日本人でも多いですが、海外のお客様は本当にコーヒー好きが多く、歩いている途中で「カフェはないの?」と聞かれることも多いです。

あるかい、そんなもん(笑)

まだ1日2日くらいなら我慢できるようですが、3日目くらいになってくると「宿にコーヒーはあるの?」と、ほぼ禁断症状のような言動をするお客様もいますし、「コーヒーを飲まないと午後から頭が痛くなる」という人もいて、これはもう好きとか嫌いとかいう問題ではなく、カフェイン中毒なのかもしれません。

そういったニーズを汲んでか、最近はコーヒーを提供する宿も増えてきました。
よく飲む人ではあさから5~6杯飲む人もいるようです。

温泉が大好き

海外のお客様も温泉が好きな方が非常に多いです。
「今日の宿には温泉があるの?」とよく聞かれます。
・・・中には普通のお風呂を温泉と思っている人もいるようですが、これはそもそも外国には日本人のように湯船にゆっくり浸かるという習慣がないためでしょう。

宿によっては、夜中に男湯と女湯を入れ替えるところがありますが、これには注意が必要です。
以前、夜中に代わっていたことに気づかずにそのまま女湯に入り女性の入浴客とバッタリ鉢合わせになったという事件が起こっています。
この入れ替え、なぜそういうことをするのか海外の方には不思議に映るようです。

地域ごとのニーズの違い

次に、地域ごとのニーズの違いについて、主だった4つを挙げ、欧米系とアジア系でその違いを見ていきましょう。

自然

自然は、欧米系、アジア系、どちらのお客様も好きですが、少し中身が違います。
大別すると欧米系は「参加型」、アジア系は「見学型」と言えます。

「参加型」とはまさにトレッキングで自然を満喫するという体験を通して楽しもうとする形です。
一方、「見学型」とは、見て写真を撮って楽しみたいという形です。
自然を肌で体験するというよりはむしろ、見て楽しみたいという人です。

ここ熊野では、本宮は欧米系、那智エリアはアジア系というふうに「棲み分け」ができています。
これは、自然を歩きながら楽しみたい「参加型」と、バスで観光スポットまで行って極力歩かない「見学型」とに別れているとも言えます。

食についても分かれる傾向にあります。
欧米系は自分たちとはまったくの異文化である日本の料理に興味を示す傾向にありますが、アジア系のお客様は前の記事にも書いているように美食家が多く、美味しいもの(高価なもの)が喜ばれます。

買い物

欧米系はお土産程度のものは買いたがる傾向がありますが、アジア系では日本の製品を買いたがる傾向が強いです。
日本の製品はみなさんご存知のとおり、海外では人気があります。
化粧品、衣服などがそうですが、別にここで買わなくても都会に行けばたくさんあるのに・・・と思ってしまいます。

歴史・文化

これははっきり別れます。
欧米系は日本の歴史に非常に興味を持つ人が多いですが、アジア系の人はそれほどでもありません。
これは似たような文化が自国にあるからでしょう。

中には本宮大社の階段前で「この上には何があるの?」「神社です」「それなら行かない」といったタイ人がいました。
また、「神社や歩く途中の説明はいらないから、道案内だけしてほしい」と言ってくる人もいます。
こうなればもはやガイドの役割って何なん?となってしまいますよね。

次に、2カ国だけですが注意をしておいたほうがいいと思うものについて挙げておきます。

アメリカ

アメリカではいまだに?距離や温度の単位が他国と違いますので、ある程度覚えておく必要があります。
特に鉄板の単位、例えばコース説明で距離のことなどを話す場合は覚えておくといいでしょう。
今は結構キロメートル法を理解するお客様もいますが、それでもマイルでないと理解できないお客様も多いです。

メキシコ

レモンとコーラが大好きです。
料理には結構な割合でレモンをかけたがります。
また、日本のゆずも有名のようで、「yuzu」と言って通じるお客様もいます。
そして「ゆずポン酢」もメキシコでは有名のようで、それを熊野の田舎の宿で求められたこともありました。

あとはコーラです。
食事と一緒にコーラを飲むことが普通のようです。
こういった理由からでしょうね、メキシコ人に糖尿病患者が多いのは。
中には昼食時に「ダイエットコークはないか?」と、健康に気をつけながら飲まれている方がいますが、一番いい方法はコーラをやめることです(笑)
まあ、あれは中毒性がありますのでやめられないのでしょうね。


多様な文化的背景の違いを理解する⑦

宗教

日本にも神道、仏教などが定着しているように、海外でもその国が大多数を占める信仰があったり、あまり多くはないが熱心に信仰している方がいらっしゃいます。

祈りへの理解

なかでも、祈りに対する理解は必要です。

イスラム圏やキリスト教のお客様などがそうです。

イスラムでは一日に5回の祈りの時間があります。
国際空港などに行くと祈り部屋が設えてありますよね。
ただ、これも信仰の度合いによって違うようで、あるお客様をご案内している時、「案内中に祈りの時間が来ると思いますが」というと、「大丈夫、今朝まとめて5回してきたから」とおっしゃったお客様がいました(笑)
「え?それでいいの?」とこちらが驚いたくらいです。

キリスト教などでは、敬虔なクリスチャンであれば、食事の前はもちろん、朝の出発前に円陣を組んで祈り始めます。
・・・その間、私は待ちぼうけです(笑)

食事制限

また、仏教、ユダヤ教などでは信者にもよりますが中には厳しい食事制限をしているお客様がいらっしゃいます。
ただ、そのようなお客様は事前に情報がある場合が多いので、旅行会社などからの書類をチェックしておくと良いでしょう。
中には蓋を開けてみなければ分からない事がありますが。

その他

その他、意外に神経質なお客様が多いということが挙げられます。
こういったお客様のニーズに応えられるように以下のようなものを用意しておくといいと思います。
ただ、各自で持ってきている場合が非常に多いですが。

手洗いジェル

おそらく、旅慣れているお客様が多いからなのかもしれませんが、特に衛生面において神経質なお客様が多いです。
日本人であればお弁当を食べる時にそのまま弁当箱を開けて食べ始める人が多いと思いますが、海外のお客様は手洗いジェルなどを出してくる場合が多いです。

消毒液


消毒液は、怪我をした際に必要なので絶対に常備が必要です。
あと、これは私の感覚で言わせていただきますが、怪我をした場合なども、消毒液を欲しがる人が多いです。
少しの切り傷程度でも欲しがる人がいるので、小さころから怪我ばかりして放っておけば治っていた私にとっては、初めのうちは理解しにくい感覚でした。
これはやはり、衛生状態の良くない各国を旅行した先で得たお客様の知識なのでしょうね。

日焼け止め

欧米のお客様は特に日焼けには弱いです。
男女問わず結構日焼け止めを塗ります。
5月のある日、岩上峠でタンクトップと短パンで歩いている女性二人組に会いました。
その後彼女らに本宮大社で再び会いましたが、すでにゆでダコ状態で痛々しかったです。

ミネラルウォーター

これは私の経験ではなく当法人のガイドから聞いた話ですが、お客様が怪我をした時、持っていた水で傷口を洗い流そうとした際「それは何の水?」と聞いてきたそうです。
そこで「水道水です」と正直に答えたところ「あなたは水道水を消毒に使おうとしているの?」と言われたそうです。

現在の日本では水道水=きれいというイメージがありますが、他国ではいまだに上水道の設備や衛生状態が整っていないところが多いので、必ずしも水道水=きれいというイメージではないようです。

なのでこのお客様は水道水を消毒に使うことに対して懸念を示したようです。
「日本の水道水はきれいなので大丈夫です」と説明すると納得してくれたようですが、やはりそのお客様にとっては気持ちの良いものではなかったかもしれません。

私は常にバックパックに新品のミネラルウォーターの予備を1本入れています。
怪我をした時に砂などが入っている場合は、消毒液では追いつかない場合があります。
こんな時は新しい水だということをアピールする意味で、お客様の目の前でキャップを開けて見せ(封を切る音が鳴りますよね)、その水で傷口を洗浄すると安心されると思います。

また、お客様が水を飲み切ってしまった時に差し上げることができます。

体力

よく友達や知り合いから「外国人って、体格が大きいし体力があるから付いていくのが大変でしょう?」と聞かれます。
確かにそのような場合もありますが、ガイドを雇うお客様というのは、あまり体力に自信のない方が多いです。
なので、大体のお客様は歩くスピードはさほど速くありません。

また、年齢も関係ありません。
70を過ぎた人でも健脚な方は大勢います。
以前小雲取越を案内する時「歩く前に朝2kmジョギングしてきた」とい75歳の強者カップルがいらっしゃいました。
一方で、20代でも大雲取越に9時間かかったお客様もいます。

地域別で言えば、シンガポール、香港のお客様は石畳の下り坂では極端にスピードが落ちる傾向が強いです。
これは、普段周りにそういった場所がなく、歩き慣れていないためだと考えられます。


現場研修の2回目が終わりました

昨日のスキルアップ研修に続いて、本日は現場研修でした。
コースは牛馬童子口~継桜王子。
毎年この時季は極寒で、時には雪が舞ったりトイレが凍って使えなかったりしましたが、今年は比較的暖かく、ゆったりと歩くことができました。

本日の研修でもお伝えしましたが、研修では説明を詳細にしますので、普段のガイドとは違います。
なので説明はかなり長めです。
かといって、普段のガイドの通りにやってしまうと、物足りなくなります。

これは、参加者の目的によるものです。

お客様は楽しみに来ていますので、スポットでの説明を事細かくやりすぎてしまうと飽きられます。
一方、研修生は学びに来ていますので、詳細に周辺情報などを含めて深くお伝えしないと中身がないような感覚になってしまいます。

これは、私が実際に語り部さんに案内をしてもらった時に感じたことなのですが、「研修で」と、こちらの目的をお伝えすると、きちんと研修用に資料などを用意して細かく説明してくれる方もいれば、普段通りの案内をしてくれる人もいました。
結果は、前者では非常に満足度の高いものになりましたが、後者では物足りなく思いました。
こちらは学びに来ているので、普通の案内では情報量が圧倒的に少ないのです。

例えば、本のある部分数ページを読んで、その内容が何だったのかを要約する作業と似ています。
絶対に、書いてあった内容を逐一すべて再現することは不可能ですよね。

なのでインプットには大量の情報が必要です。
自分がインプットしたものを、次はアウトプットしなければいけません。
つまり、説明が出来るようにならなければなりません。
聞いて理解したことを自分の言葉で言語化できなければ、「理解した」とは言えないのです。
ガイドは、人に説明をしなければいけないのですから。
その説明をするのに、周辺知識があるのとないのとでは理解度にも影響を及ぼします。
その理解度が低いとうまく説明ができません。

こういった理由で、私の場合は一つの説明をするのに、周辺情報も含めて詳細に情報をお伝えします。

例えば、今日のコースで言うと大本の「出口王仁三郎」のお話をする時、まず大本の話をします。
大本のことを知らない参加者がいるからです。
外国人を案内する時は「日本の新興宗教」とだけで済ませる事ができますが、ガイドとなる人間には「大本が何であるか」というのを知ってもらわないといけません。
そこで大本の簡単な成り立ちを説明した上で、「ここに出口王仁三郎が来た」という話になるわけです。

ということで、研修での説明を説明できるようになるために、私自身もかなりの練習をしてあの場に立っています。
研修は1年に一回なので昨年した内容なんて忘れてしまっています。
普段はそこまで話さないので忘れてしまうからです。
なので、現場研修の前にまた復習から始めます。
しかし、これが私にはいい知識の整理と復習になっています。
ありがたいことです。

あるセミナーの講師さんが「一番勉強になっているのは講師だ」と言っていましたが、まさに本当だと思います。
おそらく、私が何年もかけて積んできた知識をお伝えしていますので、今日お話した内容をすべて話せる人なんていないでしょう。

「だったら、最初からあまり細かく説明しないほうがいいのではないか」という声が聞こえてきそうですが、そうではありません。
一昔前ではそうだったかもしれませんが、今はレコーダーというものがあります。
ガイドに案内してもらえば1回 10,000~30,000円かかります。
こういった案内を同じコースで何回も受けることができますか?
県がやっているから無料で受けることができていますが、それにも限界があります。
参加者にも人数制限がありますし、研修も一年に一回しかありませんので効率的ではありません。

なので、何回も聞いて学ぶことができる録音という方法が、一番効率的で安上がりということになります。

ただし、録音を嫌がるガイドさんもいると思いますので、最初に断りを入れるほうがいいと思います。

県の現場研修に何回も参加している人がいますが(今年はいませんが)その人は時間を無駄にしているとしか言いようがありません。
遠方から来ている方もいますので、「研修は一発で終わり」という心構えが必要なのだと思います。

ちなみに、私は録音してもらっても、一向に構いませんので。

スキルアップ研修が終わりました

本日、和歌山県主催の高野・熊野地域通訳案内士のスキルアップ研修が終了しました。
私は今回も講師として、みなさんのガイディングをみさせていただき、偉そうにアドバイスをしてきました。

今回は緊急事態宣言の影響もあり参加人数は少なかったのですが、その分ひとつのグループについて細かく見ることができ、いつもより充実したアドバイスができたのではないかと思います。

この日に備えてしっかりと準備をして来た人も多く、こちらとしても勉強させていただきました。
こうして客観的にガイディングを見させていただくと、自分では気づいていなかったことが初めて見えることがあります。

和歌山地域通訳案内士会では、新人の登竜門として「認定試験」というものを行います。
今日のコースと同じ発心門王子から本宮大社まで、基本的に一人が最初から最後まで、当法人の会員と試験官、一般参加者を案内します。
この試験でも試験官として参加をしていますが、この試験を通して「受験者」を見る目というものが養われてきた感があります。

人間、何でも経験が本当に一番大切だということを再認識しました。

また、当法人の現場研修では、外部の講師(語り部さん)にお願いをします。
なるべくたくさんのガイディングを見てもらい、知識はもちろんのこと、客観的にその語り部さんのガイディングを見てもらい、吸収するべきところは吸収してもらい、逆に悪いところは真似をしないようにして、自身のガイディングを練り上げてもらいたいからです。
これも立派な経験です。
中にはこういった研修に一切参加せず、自分ひとりで調べてガイドをする人がいますが、これは非常にもったいない話です。

今日の質問の中で、ライセンスを取得してから現場に出るまでどうすればいいかという質問をいただきました。
これに関しては、やはり経験が大切だということをお伝えしました。
その経験を積むには旅行会社に登録する方法、和歌山県の通訳案内士紹介サイトに登録する方法、ガイド団体に登録する方法があるとお伝えしました。

これから先をお伝えすればもっと良かったのですが、以前にも同じような質問を受けた記憶があります。
その時にその方は、すぐにどれか一つでも行動に移したのかどうかが一番重要だと思います。
とにかく一刻も早くデビューをすることによって今デビューをしていない人からは頭ひとつも二つもリードすることになります。

とにかく経験に勝るスキルアップの方法はないと思います。

頑張ってください。


多様な文化的背景の違いを理解する⑥

ガイドをする上で欠かせない知識として食に関するものがあります。
一つ一つについて詳細に知る必要はありませんが、いったいどういったものなのかというところを押さえていただけたらと思います。

欧米系とアジア系

食に関しては大まかに欧米系とアジア系に分けることができます。
欧米系はアレルギーに対して気を使わなければなりませんし、アジア系では美食家が多いため、何を食べたいのかということが重要になってきます。

欧米系は、食に関してはさほどうるさくなく、全く違う食べ物を口にする時に好奇心が大きいようで、お弁当を食べている時などには「これは何?」という質問をよく受けます。
しかし、前述したように欧米系のお客様はアレルギーを持っている、または何かしらの理由で食べないという方が実に多いです。
・・・ただの好き嫌いもありますが。

一方、アジア系のお客様にはアレルギーといったものはほとんどなく、結構何でも食べてくれますが、舌が肥えている方が多く、ちょっと美味しくないものであった時、「違う店を紹介してくれ」と言われたこともあります。
また、地理的に近いということもあり、リピーターが多く、日本の食べ物に慣れている方も多いです。
初めは、欧米系のお客様のように好奇心が勝っていたのかもしれませんが、慣れてくるとさらなる「刺激」が欲しくなるという、人間誰もが持っている欲望が頭をもたげてくるのでしょう。

食事制限と習慣

次に、食事制限と習慣について見ていきたいと思います。
以下に主だったものを挙げます。

ベジタリアン

欧米系のお客様に結構いらっしゃいます。
ベジタリアンにも種類があり、乳製品はOKとか、乳製品・卵はOKとか、乳製品・卵・魚はOKなど、数種類あります。
しかし、ベジタリアンにも「エセ」がいます。
たまに起こることとして、「肉・魚はNG」と事前に情報があっても、昼食のメニューを見た瞬間に「それなら食べる」と言って肉をガッツリ食べる人を何人か見たことがあります。

ビーガン

ベジタリアンの中に入りますが、ビーガンはさらに制限があり、乳製品さえ摂らない人たちのことです。
まあ、人のことなので口出しするつもりはありませんが、何でも行き過ぎは良くないと思うんですがね。
カフェなんかでもコーヒーのミルクがNGのなので豆乳にしたりなど、この田舎でなかなかハードルが高い注文があり、困る時があります。

グルテンフリー

ビーガン以上に困るものはグルテンフリーです。
グルテンとは、大雑把に言えば小麦に含まれるタンパク質のことですが、これが体内に入るとアレルギーを起こす人がおり、人によっては命に関わるような症状が出る場合がありますので注意が必要です。
ただ、そういった人はその旨を書いたカードを持っていたりします。
グルテンフリーにも「エセ」というか、意識的に摂らないと決めている人もいます。
現在の小麦は品種改良されてできたものであり、昔の小麦とは違うそうです。
その「変種のグルテン」が悪さをする・・・と考えており、意識的に遠ざけているとお客様から聞いたことがあります。
なので、食べれないことはないが、普段体に入れていないもの入れることによってお腹を下したりすることがあるとのことです。

また、世界各国を旅行されているお客様のお話では、アジアは米粉を使った料理が多いので比較的安心して旅ができるそうですが、同じアジアである日本では、米粉を使った料理やスイーツがほとんどなくて苦労していると聞いたことがあります。

甲殻類

甲殻類では、エビ・カニそのものの他に、実際にあった例としては、お弁当のご飯の上に尾頭付きのエビが乗っていましたが、そのエビから出ているエキスがご飯についたものでもNGだったということがありました。
なのでもちろん、スープに使われていることもあるかと思いますので注意が必要です。
あと、せんべいなどにも使われていることがありますので、お客様と道中でお菓子をシェアすることがあるかと思いますが、事前に情報があればそういったものを避けて買う必要があります。

このことは、グルテンフリーにも言えることです。

間違っても、かりんとうやクラッカー、ビスケット生地のチョコレートなどを買わないようにしましょう。

甲殻類の他には、イカ・タコなどの軟体動物、貝類のアレルギーなどがあります。

宗教上の理由によるもの

宗教上の理由で食べないお客様もいらっしゃいます。
以前、ユダヤ教のお客様をご案内したことがありましたが、その方は肉・エビ・貝・ウニ・タコ・イカを一切食べませんでした。
ただし、魚はOKのようで、アマゴを一緒に食べ、私が頭ごと食べるのを見て驚かれていました。
彼らはアメリカ人でしたが、魚の頭や皮を食べる習慣がないようです。

あと、私たちはあまりあませんが、敬虔な仏教の国、例えばタイやミャンマーからのお客様には注意が必要なことがあります。
ただ、仏教徒であっても結構厳しく食事制限をしている人もいれば、そうではない人もいるようです。

食事時間

食事時間で一番有名なのはスペインです。
昼はだいたい2時で、朝食から昼食の間は軽く何かを食べていると聞きました。
夜は9時からが多く、レストランも9時から開店というところも珍しくはありません。
私たちがカミノを歩いた時も、夕食はだいたい9時半から10時半くらいの間でした。
9時くらいからお客様も集まり始めます。
私たちが行った7月は日没が遅く、よる10時半を過ぎなければ暗くなってきません。
なので、9時から食事をするという習慣が旅行中に定着していきました。

日本にいれば「そんな時間に食べられない」となりますが、現地に行ってみると理由がわかります。

ただ、私たちがスペインに行った時に向こうの食事時間に慣れたのと同じように、スペインからのお客様も「日本時間に合わせるよ」という方が大半なので、さほど気にする必要なないようです。

その他

その他、変わり種としては「ヨウ素アレルギー」というお客様がいらっしゃいました。
聞いた時は「は?」となりましたが、要は昆布などに含まれているものだそうです。
あと、合わせ味噌や合わせ調味料などに含まれていたり、某スポーツドリンクのアクエリ◯スにも含まれています。

以上、外国人の食に関する情報をご紹介しました。
こういった情報は、旅行会社経由であれば事前に入手できることが多いですが、中にはそれが間違っていたり(情報の誤認)、まったく情報がなかったのに、いざツアーが始まったら実は◯◯アレルギーだった・・・ということもあります。

そんな場合は、なるべく早く、宿にお伝えする必要があります。
旅行会社経由であれば、その旨をまず旅行会社にお伝えするといいでしょう。

ご参考にされてください。

多様な文化的背景の違いを理解する⑤

時間の感覚

外国の人は、日本人のように時間通りに現れることが少ないと理解しておく必要があります。
初日で、しかもその前に行程がないお客様については、待ち合わせ時間にはだいたいきっちり来てくれますが、スルーガイドの2日目からは特に注意が必要です。
逆に初日でも、待ち合わせ時間の前にどこかに立ち寄るなどの行程があった場合は、遅れることが多いです。

南方系のお客様は時間にルーズ

相対的に、欧米豪の方は比較的集合時間に来てくれることが多いですが、南方系の方は遅れることが当たり前のような感覚です。

なので、スルーガイドの場合で、翌日の集合時間をお伝えする時などは、少なくとも出発したい時間を10分早めて言う必要があります。
それでも、ひどい時は20分遅れで朝食会場に現れることもありますが、本人たちは遅れて来たことに対して悪びれる様子は全くありません。

ここで言う「南方系」とは、シンガポール、マレーシア、メキシコ、フィリピン、香港、スペインなどを指します。
他にもいわゆる「南方系」のお客様はいるでしょうが、わたしはあまりご案内したことがないのでわかりません。

また、こういったお客様は集合時間に遅れるだけではなく、道中でもかなりゆっくりと過ごす傾向があり、日本式にキチキチに行程を組むと不満がでます。
通常であれば2時間で終わるようなコースも、倍以上かかる場合があります。
旅行会社さんもこういった国民性を承知した上で行程を組んでもらたいものです。

以前、フィリピンのお客様をご案内した際、熊野古道の物珍しさも手伝ってか、まさに「一歩歩くごとに全体写真」のような状態でした。
このままでは道中で日暮れを迎えてしまうと判断したわたしは、ある地点で「このままのペースで行くと古道の中で暗くなってしまいます。明日も同じような景色のところを歩くので、これからは先は写真は撮らないでください」と強く言いました。

それに対して反論はありませんでしたが、ちょっと「シュン」となっていて可哀そうでした(笑)
案の定、古道から出てほどなく辺りは暗くなり、宿に到着した時にはすでに真っ暗でした。

このお客様のグループはスルーガイドで5日間ご案内しましたが、スポーツ用品店での買い物で1時間過ごしたり、アスファルトの道でも「歩いているのか」というようなペースで歩いたりと、終始ゆっくりモードでしたが、時間の許す限り好きなようにしてもらいました。

毅然と振る舞うことも必要

また、これもフィリピンのお客様でしたが、出発時間を7時と伝えると反論してきました。
そのお客様たちはカミノを歩いていて、その時は毎日9時出発だったと言い張るのでです。
しかし、カミノと熊野古道は同じ巡礼道でも様相がまったく違います。
その感覚をこちらに持ってきてもらっても困ります。
熊野は熊野、カミノはカミノです。
なので7時で押し通しました。

ガイドは、時に毅然と振る舞わなければ舐められてしまいます。
一旦舐められてしまえば、あとは言うことを聞いてくれなくなります。
外国人は相対的に言い方は悪いですが子供のような一面があり、「こいつはいける」と思った人間には強く出ますが、「この人にはかなわない」と思われればかなり下手に出てきます。
逆にそういった意味では、日本人よりも扱いやすいかもしれません。



多様な文化的背景の違いを理解する④

気をつけるべき国と地域

私たち日本人は単一民族であり、他国のような多民族国家ではないがために、国と地域についての認識の違いが分からず、お客様に不愉快な思いをさせてしまう可能性があります。
ガイドを始めるにあたって、特に気をつけるべき国と地域についてお話をします。

イギリス

一口に「イギリス」と言っても、中身はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国の集合体です。

ちなみに正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」です。

私は以前イギリスのことを何の疑いもなく英語では「England」と言っていました。
以前イギリスのお客様とサッカーの話題になり、「イングランド」という言葉を聞いたお客様が「いや、うちは『スコットランド』だ」と言われても意味が分からず、「なぜイギリスなのに違う名前で複数のチームがワールドカップに出てるのか?」という質問をしてようやく意味が分かりました。

特にスコットランドの方は「スコットランドはスコットランド」という意識が強いようです。

それからというもの、私はイギリスを英語で言う時には「England」ではなく「UK」または「United Kingdom」というようにしました。

スペイン

スペインも元は複数の国家が集約されて形成された歴史的背景があるために注意が必要です。
私の先輩ガイドは、「スペイン」という言葉を使った時に「私たちはスペインに征服されたので『スペイン』と呼んで欲しくない」と言われたそうです。

先ほどの私のイングランドの話と非常に似ています。

中でも、フランスと国境をまたいで存在するバスク地方は、今はスペインに併合されていますが、独特の言語と文化を持つ地域です。
言語はどのヨーロッパの言語とも似ていない特有の言語だそうです。
また、見た目も東洋人に似ています。

私は「イングランドの経験」から、お客様と会話をする中で、バスク出身と聞いた際には必ずスペインのことよりバスクの話題を中心に質問をします。

中国

最近になってようやく、中国によるチベットやウイグル(東トルキスタン共和国)の人権弾圧の話題が表に出てくるようになりましたが、この2つの国はれっきとした仏教とイスラム教の国です。また、南モンゴルも一つの国でした。

文化大革命により、チベットでは120万人が粛清され、6000もの寺院が破壊されました。
ウイグルでは50回以上に及ぶ核実験が行われ、ウイグルでは癌の発症率が飛び抜けて高く、また、チベット民族やウイグル民族を根絶やしにするために、妊婦は強制的に中絶をさせられ、大量の漢民族を移住させて「同化」を図っています。
また、反政府の言動をしようものなら、強制的に収容所に入れられ、二度と戻って来れないばかりか、「獄死」した人々は遺族でさえも引き取れないという現状があります。

ちなみに、みなさんが愛してやまないパンダも、元はと言えばチベットのものです。

記憶に新しいところでは香港も、残念ながらおそらくチベットやウイグルと同じ道をたどることになるかのしれません。

特に、香港からいらっしゃるお客様が多く、日本が大好きで日本に旅行をすることを「日本に帰ってくる」という人までいるくらいなので配慮には特段の注意が必要です。
私は恥ずかしながら、以前は香港と中国は一緒なのだと思っていました。
香港の方とお話をした際に「中国人とは全然違う!」と強くおっしゃっていたことを覚えています。

私はあまり中国のお客様と接したことがないので比較は出来ませんが、香港の方は日本人と気質が良く似ているところがあります。
・・・ちょっと時間にルーズですがね(笑)