多様な文化的背景の違いを理解する③

靴社会と座敷

靴のまま家でくつろぐ外国人には、どこで靴を脱ぎ、どこで靴を履かないといけないかが理解できません。
靴のままで乗ってはいけないところと、裸足で降りてはいけないところの区別をしっかりと伝える必要があります。

例えば、レストランの座敷で靴を脱いであがったにも関わらず、トイレに行く時や店内のお土産物を見る時に靴下のままで行こうとしたり、宿の玄関では簀子の上に靴のままであがったり、靴をいったん脱いでから靴下のままで簀子から下りて辺りをペタペタ歩いたり、トイレのスリッパを履いたまま廊下にあがってきたりと、座敷社会に慣れていないがために、この区別が結構難しいようです。

冗談でしょうが、「バスの乗り込む時に靴を脱いで乗って、靴だけが残っていた」という話も聞いたことがあります。
まあ、冗談でしょうけど。

トレッキングの服装

トレッキングの服装についても、日本と外国でのスタンダードの違いがあります。

レインウェアでは、日本人であれば上下をしっかりと着ることが当たり前ですが、欧米系は下を履かないことが多いです。
「別に下は濡れても構わない」といった感覚です。
そんなことをすれば、靴下から靴の中に雨が染み込んできて、靴の中までずぶ濡れになるのになあ・・・と、その姿を見ていつも思います。

そもそも、レインパンツの存在自体も知らないお客様がいたりします。
私が履いているレインパンツを見て「それはいいアイデアだね」と言ってきたお客様がいたくらいです。
初めて聞いた時、何を言っているのか理解するのに少し時間がかかりました。

あと、一番注意して欲しいのがショートパンツで歩くという点です。

「Lyme Disease」という言葉があるくらいですから、日本だけではなく、海外にもダニはいるはずですが、そういったことはあまり気にしないのか、はたまた「自分は大丈夫」と思っているのかは分かりませんが、男女を問わず本当にショートパンツで来るお客様が多いことに驚かされます。

あまりにもそういったお客様が多いので、「あなたの国では、それがトレッキングの標準的な服装なのですか?」と聞いたところ「そうだよ」という答えが返ってきました。
日本人は、夏場でもロングパンツはもちろん、長袖を来て歩く人が多いですが、その出で立ちが逆に欧米系の人には理解し難いようです。

私は、夏場であればラッシュガードの上にTシャツを着ることが多いのですが、そのラッシュガードを見て「暑くないの?」とよく聞かれます。
まあ、話題の一つとして話のネタにもなりますので別に聞かれることに対しては何とも思っていませんが、私の「暑苦しい格好」を見て不思議がる人が多いです。

熊野古道を歩いていて、マダニの他にも危害を加えたり、人を不愉快な思いにする虫や生き物はたくさんいます。
蚊(滝尻周辺に特に多い)、ブトウ(極小のハエのような吸血虫)、ウシアブ(大型の吸血虫)、スズメバチ、ヘビなど、あとは、少ないですがヤマビルもいます。
そういった害虫から身を守るために、肌の露出は極力抑えるようにしなければなりません。

熊野古道で人に危害を加える生き物については、こちらの記事をご覧ください。

https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2020/04/29/%e7%86%8a%e9%87%8e%e3%81%ae%e5%8d%b1%e9%99%ba%e3%81%aa%e7%94%9f%e3%81%8d%e7%89%a9%e3%81%9f%e3%81%a1%ef%bc%88%e6%98%86%e8%99%ab%e7%b7%a8%ef%bc%89/
https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2020/04/30/%e7%86%8a%e9%87%8e%e3%81%ae%e5%8d%b1%e9%99%ba%e3%81%aa%e7%94%9f%e3%81%8d%e7%89%a9%e3%81%9f%e3%81%a1%ef%bc%88%e3%83%98%e3%83%93%e7%b7%a8%ef%bc%89/

「軽装」への対処法

依頼はエージェント経由で来ることが多いので、「会ったら軽装だった」ということがままあります。
あらかじめ伝えることができる場合は事前に伝えておく方法がありますが、エージェントもそのグループの代表の方とメールのやり取りをしていることがほとんどでしょうし、海外のエージェントから日本国内のインバウンドのエージェントへの依頼という「又貸し」ならぬ「又依頼」という形式も多いので、参加者全員に周知させることはなかなか難しいところがあります。

たとえエージェントがその旨をお客様に伝えたとしても、その代表の方が参加者全員に連絡してくれなければそこで止まってしまいます。
家族ならまだしも、これが友人同士や知り合い同士であれば、さらに難しくなります。

中には「どういった服装が望ましいですか?」と聞いてくれる人がいますが、この場合はきちんと守ってくれる場合が多いです。

また、なぜ肌を露出しない服装が望ましいのかという理由も説明しておくとなお良いです。

多様な文化的背景の違いを理解する②

まず結論、次に理由

お客様と話す時に注意していただきたい点は、まず結論を述べ、後からその理由を説明するということです。
結論だけを言ってももちろん納得してくれない場合が多いので、きちんとその理由を述べてあげるといった配慮が必要です。
これは、前回の記事にも関連してくることですが、ドイツ語などでは文型によって動詞が最後にくる場合がありますが、ヨーロッパや中国語などは主語の後に動詞、次に目的語がきます。

一方、日本語が動詞が一番最後にくる「文末決定型」です。
この文末決定型は世界の言語でも約半数あるそうなので、それほど珍しくはないようです。
日本語と文法が似ている韓国語はみなさんご存知でしょうが、ヨーロッパではフィンランド語、中東ではトルコ語などが文末決定型であり、アジア圏だけが文末決定型ではないということが興味深いです。

その母語の特性が話し方にも現れます。

日本語のように文末決定型で説明をしていると、聞いている外国人のお客様はイライラし始めます。
私がまだ駆け出しの頃はこの事が理解できておらず、まず結論に至った理由から話していました。
中には・・・インドのお客様でしたが・・・「私はそんなことを聞いているのではない!」とキレ気味に言われたことがあります。
「これから結論を言います」と言ってその場は収まりましたが、ここで気づきました。

「まず結論ありき」

だということにです。

日本人が会議などで決定事項などを説明する時、ます経過や背景から話し始め、結論を最後に言うスタイルが多いです。
しかし、その経過や背景の説明が二転三転すれば、聞いている方は「いったい何が言いたいのだ」と混乱してしまいます。

また、外国人には「起承転結」という概念がないため、理解できません。
なので、この流れに沿って話しても「だから?」という感じになります。
特に「転」がなぜ必要なのかが分かりません。

①今日のコースはバスでスキップすることにします。

②天気予報では、午前中は小雨がぱらつく程度で時折晴れ間も見えるという予想ですが、午後から雨脚が強くなると予想されており、午後から峠越えなどのハードな部分を歩いている時に大雨に遭う可能性が高いです。

③長い石畳を下らねばならず、滑って転倒してしまう可能性も十分にあり、今日このコースを歩くのは危険と考えました。

②や③から話し始めても「だからどうするの?」となります。

①今日のお弁当は、宿から出ないということに今気づきました。 申し訳ございません。

②お弁当は、サポートガイドが近くのスーパーでサンドイッチを買って昼食場所まで車で持ってきてもらうように頼みました。

③もうすぐガイドがスーパーに到着しますので、好きなものを言ってください。

④今回の旅行会社のツアーはいつもの旅行会社とは違い、昼食は自分で用意をするということが前提になっており、てっきりそうだと思い込んでいました。

④から始める人はいないでしょう。
ちなみに私は「④から話す人」でした(笑)

また、結論から伝えるという方法は、メールでも大きな威力を発揮します。
文章は、考えて作ることができるため、色んな情報を盛り込みすぎて結局何が言いたいのかがぼやけてしまっていて、何回読んでもよく分からない内容のものをよく見かけます。

結論をまず最初に述べ、次に理由を述べることで読み手のストレスが驚くほど軽減します。
メールでも口頭でも、まず相手がどうすればよく理解してくれるのかを考えて伝えるということが非常に大切です。


多様な文化的背景の違いを理解する①

今回は、私が青森で講演を行った「多様な文化的背景の違いを理解する」でお話した内容を加筆・修正してご紹介します。
日本人と外国人の考え方の違いはどういったものなのか、なぜそうなったのか、また、それらに対応するにはどうすればいいか、国ごとのニーズの違い、リスクと注意点、熊野でのトラブルの実例、お役立ちフレーズなどについてお話していきます。

かなり長いシリーズになると思いますが、ご参考にされてください。

個の主張が強い

海外のお客様は、自分の意思をはっきりと言う人が多く、ガイドが提案したことでも嫌なことははっきりとNOといいます。
これにはそのような正確となる背景があります。

母語の干渉

一つは、母語によるものです。
英語をはじめとするヨーロッパの言語の多くは、日本語のように文末決定型ではなく文頭で結論を述べます。
この特性が人格や考え方を形成しているという点は否めません。
言葉はその人の人格を形成します。
また、日本語で「わたし」にあたる言葉が非常にたくさんあります。
わたし、わたくし、俺、僕、うち、あたい・・・方言を入れると多すぎて把握できないくらいです。
たとえばすさみの見老津あたりでは「ぼか」、串本では「うしゃ」など。
また、「先生はな」「お父さんはな」など、相手の立場から自分の呼び方を変えるという「曲芸」もやってのけます。
したがって、相手の立場に立って自分を表現する日本語では「相手の意見に合わせる」という考え方が主流になります。

一方、ヨーロッパの言語や中国語には「I」にあたる言葉は一つしかありません。
つまり、「私」がすべての中心であり、まず自分ありきという考え方です。
なので、「私」と「私」、お互いの主張をぶつけ合い、お互い納得のいく着地点を見つけるまで議論をするという方法を取って物事を決めていきます。

言語は大いに人格形成に影響を与えます。

団体行動に慣れていない

もう一つは、幼少の頃から団体行動というものをしていない、または経験が少ないという点です。
私たち日本人は、早ければ保育園から集団生活に入り、団体で行動をします。
日本人は自然と団体行動が当たり前という感覚になり、人と違うことをすると咎められるという社会です。
かたや、外国では個を重要視し、団体行動で個を潰さないように育てるため、根本から考え方が違います。

また、募集型のお客様と受注型のお客様とでは、同じ団体でも違います。
どういうことかというと、募集型は見知らぬ人が集まった集団なので、「私が楽しみたい」という心理が一層強く働く傾向にあります。
かたや、家族や職場のグループで来ている、いわゆる受注型のお客様のグループは、仲間意識が強く、少し遅れている人などがいると待ってあげるということが多いです。
あくまでも「傾向」なので一概には言えませんが。
募集型とはいわゆるパッケージツアーのこと。受注型とはオーダーメイドのツアーのことを指します。
もっと詳しい募集型と受注型の旅行形態の違いについては、こちらを参照してください。
募集型企画旅行・受注型企画旅行・手配旅行の違いを詳しく解説!

主張の強いお客様に対して、どのように対応するか?

では、このような考え方のお客様を相手にする場合はどうすればいいのでしょうか?

もちろん、「私の言うことに従いなさい」と頭を押さえつける荒業も有りだと思いますが、最初は言うことを聞いてくれていても、しばらくするとまた元通りということになります。
こういったお客様には柔軟に対応するといいと思います。

例えば、「ガイドの前を歩かないでください」と言っても守れない人がいます。
こういった人は健脚かつせっかちな人が多く、遅れがちな人を待つことができません。
「私が楽しみに来ているのに、何で我慢しなければならないの?」という考えなのでしょう。
そんな人には、安全な場所では先に行ってもらうということを私はやっています。
これには賛否両論があるでしょうが、我慢できない人は本当に我慢できませんので仕方ないと思っています。
それを、日本式の考え方の枠に押し込めれば、お客様にとってストレスとなります。
但し、「あと15分位であづまやがあるから、そこで絶対に待っていてください」と待合せをしています。
そうすると、ほとんどのお客様は待っていてくれます。

私が聞いた話では、ニュージーランドのトレッキングではまず誓約書に記入しますが、その後はガイドの先を行ってもいいというスタイルだそうです。
ニュージーランドと言えば有名なトレッキングルートが数多くあります。
熊野古道に来るくらいのトレッキング好きのお客様からも、よくニュージーランドに行ったという話を聞きます。
なので、そういった感覚で来られる方がいるのかもしれません。

現場研修で学ぶべきこと②

今日は前回の続きです。
前回の記事を読まれていない方は、こちらも合わせて読んでいただくことをおすすめします。

https://7875937fbfc6f01c.main.jp/2021/01/08/%e7%8f%be%e5%a0%b4%e7%a0%94%e4%bf%ae%e3%81%a7%e5%ad%a6%e3%81%b6%e3%81%b9%e3%81%8d%e3%81%93%e3%81%a8%e2%91%a0/

参加者への配慮

現場研修では、古道にまつわる知識の習得の他にも、実際のガイドを見ながら学ぶべきことがあります。
その中の一つとして、参加者(お客様)への配慮は欠かせません。

休憩の取り方・水を摂るタイミング

アップダウンの多い熊野古道では、適宜小休止を入れながら歩かないとお客様は疲れ果ててしまいます。
お客様の顔色やペース、お客様から聞こえる息遣いなどで止まるかどうかの判断をする時もあります。

私は、滝尻から剣ノ山の1kmの上りではかなり多くの小休止を取っています。
小休止も、バックパックを下ろして5分程度取る時もあれば、本当に一息つくくらいの1分程度の短いものまであります。
特に冬場などの気温が低い時季であれば、あまり長い休憩はかえってお客様の体温が下がってしまい、次に動く時に体が重くなってしまうので、なるべく体を冷やさないように短めに取ることが必要です。
夏であれば逆に少し長めに取って、体温を下げるようにしています。
特に欧米系のお客様は暑さ(特に高い湿度)に弱い傾向がありますので注意が必要です。

お客様によっては休憩を取らずにゆっくり歩き続ける方がいいという方もいらっしゃるので、お客様が一番疲れない方法を選択することも必要です。

小休止の間の会話ですが、ただの会話でもかまわないですが、何か話す内容を用意しておくとお客様を退屈させずに歩くことができます。
ただ、お客様が息を切らしている間は話すことはしません。
水を飲んでもらって一息ついてからとか、少し息が整ったのを見計らってから話します。

歩くペース

お客様のペースで歩くことが大前提です。
こまめに振り返ってお客様が全員ついてきているかどうかを確認する必要があります。
私は基本的に、直線になった時やつづら折れの時などに、近くに最後尾が見えているかどうかで一旦止まって最後尾が到着するのを待つかどうかの判断をしています。

和歌山地域通訳案内士会の認定試験中では、時間を気にするあまり何も言わずお客様を放っておいて自分だけ速く歩いてお客様の視界から消えるガイドがいますが、安全確保の点から絶対に避けなければいけません。
自分だけ早く歩いても、お客様のペースと合っていなければあなたについてきてはくれません。というか、お客様はついていけません。

バスに間に合わないなど、時間がなければその旨を伝えてください。
お客様のペースは自然に速くなります(笑)
それ以外は基本、ゆっくりと楽しみながら歩きたいのがお客様です。
自分たちもお客様の立場であればそう思うはずです。

「ちょっと早く歩いているかな?」と思ったら、「このペースは速いですか?」と、お客様に聞いてみることです。

注意喚起のポイント

古道の中では下りの濡れた石畳で滑ったり、木の根につまずいて転倒したり、小石に乗って滑る(「石車」といいます)といった事故が起こります。
こういった場所に差し掛かった際には、必ず注意喚起をすることを癖付けておくことが重要です。
道路では横断歩道を渡ることを守っていただくことも必要です。

あとは、大人数を案内している時に、他のお客様の迷惑にならないよう、説明で止まっている際には他のお客様が歩けるだけのスペースを空けておくといった配慮も必要です。
説明に一生懸命なあまり、見落としがちになりますので注意が必要です。
また、熊野古道を歩いていると、ペースの速いグループが追い越そうとしている場面に遭遇します。
この時には、そのグループが追い越しやすい、少し広い所で止まって先を譲るという配慮も必要です。

大切なのはガイド目線とお客様目線で見ること

大切なのは、ガイドはこの時にどうしているのかという「ガイド目線」と、どのようなガイドの振る舞いや行為が嬉しかったのか、逆にガイドのこの行為はダメだなという「お客様目線」の両方の視点から見てもらえれば、総合的なガイディングを学ぶことができると思います。
特にガイドが何気なくしている行為などは、現場の知識にばかり目が行っている場合に見落としがちになりますが、ぜひとも今回ご紹介した視点で見ていただくことをおすすめしたします。

以上、現場研修で学ぶべきことをご紹介しました。
参加者によってまた違った学び方もあるでしょうから、これがもちろんすべてではありませんが、ご参考にしていただければ幸いです。

現場研修で学ぶべきこと①

今回は現場研修で学ぶべきことについてお話をします。

昨年12月から、高野・熊野地域通訳案内士の現場研修が始まりました。
現場研修は経験のある講師のガイドを生で見ることができ、県の主催ということで無料で受けられる貴重な場です。

そんな現場研修で、何を学ぶべきなのかをお伝えしようと思います。
現場研修は、現場にまつわる話を学ぶということが重要であることは言うまでもありませんが、その他にも気を付けて学ぶべきことがあります。
今回はその点についてお話をします。

説明の方法

とかく、現場研修ではその現場の知識を得ることに重きを置きがちですが、講師がどのように説明をしているのかを見ることも重要です。
ガイドが以下にご紹介する点に配慮しているかを見るといいと思います。

表情

赤ちゃんが微笑むとこちらも笑顔になるように、笑顔は相手に伝播します。
お客様は楽しみに来ているので、まずは「自分は楽しんでいます」という表情をお客様に示すことにより、お客様も楽しい気分になります。
もちろん、説明中ずっと微笑んでいる必要はありませんが、面白いことを言う時などに微笑んで話すなどの緩急をつけることです。

アイコンタクト

一人のお客様だけを見るのではなく、まんべんなくお客様を見ることも重要です。
一人だけ見て説明をすると、他のお客様は疎外感を感じてしまいます。
場が盛り上がるのは一体感が必要です。
特に、募集型で集まったお客様同士は顔見知り同士ではありません。
そして、人数が多くなればなるほど、その一体感を出す手助けをするのがガイドです。
「ここにいる皆さんは、私にとって重要です」という意思を示すためには、アイコンタクトが強力な武器になります。

音量

ワイヤレスマイクを使って説明している際にはさほど重要でないかもしれませんが、常に現場でマイクが使えるとは限りません。
むしろ使えないことの方が多いです。
そんな時に、はっきりと大きな声で説明をする必要があります。
また、神社やお寺の境内では大声で話すことは他の参拝者の迷惑になることから、なるべく密集してもらって声を落として話すなどの工夫が必要です。
現場に応じてガイドがどれくらいの音量で話しているのかを見てください。

立ち位置

立ち位置も重要です。
例えば、お客様が日差しを顔にまともに受けるような場合は、立ち位置を入れ替えて日差しを背にしてもらうように立つようにします。
また、大人数を案内する場合は、列の先頭で案内すれば後ろの人は聞こえませんので、列の中心に入ってまんべんなく聞こえるように説明するなどの工夫も必要です。

写真

ガイドをしている時、写真や資料を見せることがあります。
写真や資料は、聴覚と視覚に訴えるため、人の記憶に残りやいという研究結果も出ていますので積極的に使用したいところです。

ただ、せっかくそういった物を用意していても、その見せ方が残念な場合があります。
ガイドの立ち位置が悪くて見えない場合や、自分が指している指(手)で見えなかったり、すぐにしまったり、自分の方に向けて見せていたり。

基本的には、誰もが見える位置に立ち、なるべく高く掲げて見せ、説明場所が狭く、スペースの関係で全員が見えないような場合は写真を左右にゆっくり振るなどして見せることが必要です。

あなたが目指すべきガイド像

今日は「あなたが目指すガイド像」についてお話します。

今、和歌山県の高野・熊野地域通訳案内士の現場研修の期間に入っています。
おそらくみなさんは、様々なガイドから高野と熊野について学ぶことになると思います。
その中で、一つ気になるというか、注意すべき点があると感じたので今日はこの話題を取り上げました。

あなたの色はあなたしか出せない

結論から言うと、「あなたの色はあなたした出せない」ということです。

一口にガイドと言っても、様々なタイプの人がいます。
10人いれば10人とも違うタイプのガイドさんです。
わたしは以前、多くのツアーリーダーさんと一緒に仕事をしてきましたが、それぞれに個性があり、誰一人として同じタイプの人はいませんでした。
もちろん、似ているなということはありますが、まったく同じということはもちろんありません。
どういったタイプに別れるのかは、性格によるものや他者からの影響によるものが一番大きな要因になると思います。

性格は変えられない

ここが一番重要で当たり前なのですが、性格はまず変えることはできません。
この話は他者からの影響とつながってきますが、例えば他のガイドの案内が漫談のように面白くてお客様を絶えず笑わせる内容だったとしても、それはその人の性格によるものであり、自分の色が出せているからこそ、お客様からのフィードバックも高くなるのだと思います。

もしあなたが普段そういったタイプではなく、それをそのまま、言い方は悪いですが猿真似をしても、いずれ限界がきます。

他者の案内のいいところは切り取って引用する分には大いにありだと思いますが、キャラクター(性格)を真似することはやめておいたほうがいいです。

いかに自分の色を活かせるか

ガイドはお客様を喜ばせるための存在、エンターテイナーであることには変わりありません。
もちろん、とくに熊野古道においてはお客様の安全を確保するということもありますが、それを除けば結局のところ、いかに自分の色を活かせるかにかかってきます。

これから様々なガイドの案内を実際に見ることになるでしょう。
また、研修とは別に、人気のある京都などのガイドさんの案内を直に体験する方法もいいと思います。

しかし、その内容はその人の個性であり、強みを生かしてあの舞台に立っているわけです。
なかにはたくさんお客様を笑わせているガイドさんや、自分の世界に強引に引き込んでいくガイドさんもいますが、それをそのまま真似るということではなく、「こういう方法もあるんだな」という程度で、参考程度にとどめておくほうがいいと思います。

なにもお客様を笑わせることとお客様の満足がイコールだとは限りません。
また、自分の世界に強引に引き込むこととお客様の満足がイコールだとも限りません。
相手も人間であり、それぞれ持っている性格も当然違いますので、絶対に「合う・合わない」があります。
同じ方法が、ある人にはガッチリハマっても、違う人にはイマイチということもあります。
この傾向は、個性が強い内容になればなるほど「満足」と「ダメ」の落差が激しいようです。

あなたの強みは何か、どうしたらお客様を満足させることができるか、そういった観点から、ご自身のガイド像を作っていってもらえたらと思います。

あなたの学習の成果を発表する場ではない

最後に、ここはよく勘違いされている人が多く、ベテランでも犯してしまっている点なので改めて書いておきます。
それは、ガイドはあなたの学習の成果を発表する場ではないという点です。
当たり前のようですが、本当にできていない人が多いです。

せっかく勉強したのだから、なるべく多くの情報をお客様に伝えたいという想いのあまり、自分が持っている知識をありったけ話すガイドさんがいます。

お客様は学習をしに来ているのではありませんし、一方的な話は聞いている方も疲れますし、聞いた内容を咀嚼する時間もないのでほとんどお客様の頭には残っていません。

お客様が楽しむお手伝いをすることがガイドの役割ですから、「俺の話を聞け」とばかりに自分の知識をひけらかす行為は、逆にお客様の心を引き離してしまいます。

研修講師≒ガイド

また、研修の講師と実際のガイドは似て非なるものであり、わたしは研修のやり方をそのままガイドに、またその逆で普段のガイドのやり方をそのまま研修に当てはめていません。
結局、案内を受ける側が何を求めているのかによって、その内容が変わってくるということです。

例えば、研修であればスポットでの説明とともに、案内するにあたってどういった点に注意すべきか、また、自身の体験談を交えてこういった場合にはこうして対応したなどという話を織り交ぜて案内します。
また、説明も自分の持っている知識をほとんど吐き出すようにしています。

これは、受講生が求めているものが「自分がガイドをする場合の注意点」「実際の体験談」「その現場にまつわる深い知識」だからです。

これをそっくりお客様の案内に当てはめるとどうなるか・・・

逆も然りです。

ガイドでの内容をそのまま研修に当てはめると、受講生はおそらく満足はしてくれないでしょう。
要は説明の内容が物足りないと感じるからです。
実際に、ガイドではフィードバックが高い人でも、その人が講師になって研修をするとまったく面白くない、つまり、こちらの求めているガイドをする場合の注意点や深い知識を得ることができないということがよく起こります。

ガイドをする際には十分注意していただきたいところです。

また明日です。



一回目の現場研修が終了しました

飯盛山から

和歌山県が主催する、高野・熊野地域通訳案内士育成の現場研修の第一回が終了しました。

あまりすっきりしない天気で、途中はパラパラと雨が降ったりしましたが、そのおかげで飯盛山からは虹を見ることができました。

大変なコースですし、今回はマスクを着用しての歩きだったので通常の研修よりも体力的にきつかったと思いますが、みなさん無事に歩き終えることができました。

今回のコースは滝尻から高原でした。

みなさん意識が高く、たくさんの質問を受けました。

なかなかすべてにみなさんが納得できるような答えができたわけではありませんが、たくさんの質問を受けたことによって、またひとつ自分にも課題ができました。

こういった過程を経ることによって成長があります。

今日も研修の中でお話させていただきましたが、ある程度の知識を得た後は行き当たりばったりでもいいので現場に出てみることです。

現場に出ることによってこそ、そこから先の成長があります。

お客様から来る質問も、現場に出てお客様と対峙しないと分からないことのほうが多いです。

ある程度準備することは重要です。しかし、後はいくら予想をしてもそれには限界があります。

また、研修では知識の習得だけに目が行きがちですが、他にも見えないところでの気づかいや、お客様の管理など、他にも現場に出て実際に動いてみないと分からないことが多いですし、こういったことをいくら机で勉強しても経験を重ねないと身に付きません。

「いやぁ、自分はまだまだだから」と言っている間は、そこに成長はありません。

今は武漢コロナでなかなか動けない状況ですが、機会をみつけてなるべく多く現場に出て実際に案内してみることをおすすめします。

三越峠の下り坂を歩いてきました

三越峠から発心門王子方面の下り坂を改めて歩いてきました。

主要な番号は覚えていましたが、今回の下り坂の終点あたりに番号道標があったのかどうかの記憶もあいまいでしたので、もう一度確認をして頭に叩き込んでおく必要がありました。

また、万一救急を呼ばなければならない場合、どこまで行けば電波状態が良くなるのかも確認してきました。

本来、こういったことは事前にしておくべきことです。下見の際にもその意識が欠けていました。

これはもう、慢心によるものです。怪我をされたお客様はお気の毒ですが、今回はわたしにとっていい薬になりました。

それで分かったことは、携帯のキャリアはもちろんですが、機種によっても受信電波が違うということです。

わたしはdocomoを2台持っています。

熊野古道ではdocomoが受信電波においては最強です。そのdocomoの同じSonyのエスクペリアでも、機種によって違うことがわかりました。

なぜなのかはわかりませんが、次回もし、同じようなことが起こった場合(起こってほしくないですが)は、両方の機種で確認することも必要ですね。

確認が終わった後、先日のお客様の骨折事故で、そのお客様を車で発心門王子まで送ってくださった山本組さんにお礼をしがてら、脳梗塞でガイドの「戦線」から身を引かれている方がこの近所ということもあり、ちょっと寄らせていただきました。

一年あまり前に倒れられましたが、現在はリハビリの甲斐もあって目立った後遺症もなく、今は5kmまで歩けるようになったそうで、元気にされている姿を見て安心しました。

早く良くなっていただき、また復帰してもらいたいものです。

日本語指導とガイドの共通点

日本語指導の第一人者、谷山徹先生から、日本語指導についてたくさんのお話を聞く機会をいただいています。

そのお話の中で、外国人を案内するガイドとの共通点が多く見られることに気づきました。

今日はその一部をみなさんに共有しようと思います。

外国人から見た日本

一番大きな共通点は、「外国人から見た日本」「外国人から見た日本語」という視点を持つということです。

私たち日本人の「当たり前」が、一歩引いて改めて見つめてみると、なぜそうなのか、理論立てて説明することが難しいということが実に多くあります。

たとえば、ガイドで言うと

「神社の朱色の起源と意味は何ですか?」

日本語指導で言うと

「さっきに地震があった」の「に」はなぜおかしいのでしょうか?

私たち日本人は、神社が朱色に塗られていても何ら不思議ではありませんし、「さっき地震があった」と誰もが言えるはずです。
しかし、これが外国人からみると、なぜ朱色なのか、なぜ「に」をつけてはいけないのかが分からないのです。

さて、あなたはこれらについて、相手が納得するように説明することができますか?

ガイドも日本語指導も、相手は外国人です。
こうして常日頃から「なぜそうなのか」という視点で物事を見ていると、意外な発見があり面白いです。

知識を教える前に技術が必要

日本語指導の場合、指導初心者には知識を教えさせる以前に、指導のコツと技術を教える必要があるとのことです。
これもガイドと重なる部分があります。

日本語指導で言えば、例えばホワイトボードの書き方。

慣れない人は、ホワイトボードに書いた字を自分でブロックしてしまって生徒がそれを見ることができなかったり、開始早々いきなり5分間無言でホワイトボードに書き続け、書き終わってから説明を始める人がいたり、生徒の方を見ないでホワイトボードに向かって話す人など、様々な人がいたり。

内容に入る前にそういった「技術」を教える必要があるとのことです。

これは、ガイドにも同じことが言えます。

たとえば、手に持っている写真を自分の前に掲げず自分の横に掲げたせいで、その背後に立っている人がその写真を見れなかったり、写真を水平にして自分の方に向けて見せたり、ゴトビキ岩に向かって話したりと、日本語指導でやってしまう点と本当によく似ています。

また、教師あがりの人に多く見られる傾向として、学習者を子供扱いする人が多いそうです。
これにガイドが当てはまるかどうかは分かりませんが、もしあなたが教師経験があり思い当たる節があれば気を付けたほうがいいと思います。

外国人は特に子供扱いというか、見下されることを本当に嫌います。

「さっき言ったことを覚えているか、テストをします」

なんて、間違っても言わないようにしてください。
お客様は楽しみに来ているのであって、教育を受けに来ているのではありませんので。

教育実習を通してフィードバックをもらう

日本語指導では、指導初心者が実際に生徒に向けて、主任教員が決めたテーマに沿って授業をし、後から、同席した先生や生徒からフィードバックをもらうということをしているそうです。

当法人でも、認定試験というものがあり、当法人の試験官や会員、そして一般参加者を実際に案内して、その後フィードバックをもらうということをしています。

そこで、良かった点と改善点を受験者に伝え、今後実際にガイドをする際の指針となるようなシステムを採っています。
日本語指導と違うところは、試験ですので基準点に満たない場合は再試を受けなければならないという点です。
この点では当法人の方が厳しいかもしれませんね。

しかし、実際に現場に出て困るのは本人です。
その前に先輩ガイドからのフィードバックをもらえることによって、お客様と対峙するまでに改善できるという点では、非常にありがたいことだと思います。


日本語指導勉強会 第二部が始まりました ~知識の習得法~

9月から始まった日本語指導勉強会の第二部が始まりました。
第二部のテーマは「不思議日本語文法」「中級教材の使い方」で、それぞれ3回に分けて深堀りをしていきます。

谷山先生の長年の経験から出るお話は非常に説得力があり、まさに現場で磨き上がられたスキルだということを毎回実感します。

わたしもこれまで何度となくこのブログや現場研修で受講生のみなさんにお伝えをしていますが、現場に出ることによってガイドのスキルが磨かれていきます。
谷山先生の30年以上の経験から比べれば、私のガイド経験なんてひよっこの部類ですが、それでもこれまでに得た知識は経験によるところが大きかったことは確かです。

ちなみにわたしの場合、知っている知識であっても、教えてもらう立場でいる限りは初めて聞いたように振る舞います。
あなたにも経験があるかと思いますが、自分の話を興味深く聞いてくれると気分が良くなります。
そうなると、もっとその周辺知識も話そうという心理が働きます。
わたしはこれを逆手に取って、相手の話を興味深く聞き、相槌を打ち、時には身を乗り出すなどして聞いていることをアピールをし、さらに相手の話を引き出します。

なので間違っても「あ、その話は知っています」とか「それについて私の経験では◯◯で、・・・」とか「いや、それはこうですよ」など、自分に話の主導権が来るような言葉を一切使いません。

これは、ガイドをしている時に、お客様が自分の知識について話し始めた時も同様です。
仮に自分が知っている知識であっても、興味深く話を聞いてあげます。
話の前半は知っている知識であってもそれはイントロダクションで、核心部分は初めて聞いた・・・なんてことはよくあります。

私の場合ですが、さきほどの言葉が相手から出た時点で「この人はすでに私が話そうとしていることを知っている」と判断し、それ以上話すことを止めます。
おそらく物を教えている立場の人であれば、同じ態度を取るのは私だけではないと思います。

あなたはそういった言葉を使っていませんか?
もしかすると、知識の習得が遠回りになっているかもしれません。